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外伝【参】夏祭り ページ48

未だに収まりそうにない吐き気に顔をしかめ、私はベンチから起き上がり、杏寿郎が帰ってくるのを待った。
なかなか帰ってくる気配のない杏寿郎。さすがに探しに行こうかと腰を上げた瞬間、背筋が凍るような寒気がした。
_______鬼だ。
浴衣の下に隠し持っていた日輪刀に手を添え、感覚を研ぎ澄ます。嫌な感覚があったのは、出店の方ではなかった。
再び凍てつくような感覚に襲われたとき、私は暗い林の中に、顔が3つに分かれた異形の鬼を見た。

【炎の呼吸 壱ノ型 不知火】

私の刀は、鬼の頭を斬り落とした。だがいつものような感覚はない。今のは、鬼ではない。

「稀血だ」
「稀血の娘じゃ」
「どう喰い殺そうか」

気味の悪い3つの声。気配はするのに、そこにいない。水を斬っているような、手応えのない感覚。
鉄のような灰色の皮膚に、4本の腕を生やした3頭の鬼。目の前にいるのに、斬れない。

「いっ!」

見えていたはずの攻撃を、肩に食らった。傷は深くはないが、浅くもない。
呼吸で止血をするが、あまり時間はかけられない。油断は着慣れない浴衣と下駄のせいで、動きづらい上に、足のバネも殺される。

「粘るなぁ」
「鬼殺の子か」
「めんこいのぉ」

聞くのも吐き気がする。
そんな欲で染まった目で、私を見ないで。

【炎の呼吸 伍ノ型 炎虎】

どれだけ刀を振っても、鬼は霧のように消えては現れる。まるで幻のように。
落ち着け、嫌な視線の先を追え。目に見えるものが全てじゃない。相手が鬼ならば、必ず頸はある。

【炎の呼吸】

声がするのは幻から。だけど、あの嫌な視線はそこからはしない。でも、近い。
_______上か!

【弐ノ型 昇り炎天】

木影に隠れた鬼の頸を、私の刃が通る。
不気味な呻き声を上げる幻通りの鬼の姿がそこにあった。
頸を斬った私の勝ち。まだ鬼は完全に消滅していないというのに、私は刀を鞘に収めた。

「カアアァァ!」

頸だけになった鬼が、ガスのようなものを吐き出した。反射的に息を止めはしたが、少し吸ってしまったかもしれない。
今度こそ跡形もなく消えた鬼の亡骸を超えて、私は杏寿郎のいるであろうベンチを目覚まして歩いた。
途端に、激しい目眩、吐き気、頭痛に襲われた。鬼のガスが原因だろう。

「ちょっと……マズイかな」

日輪刀を杖代わりに、ようやくベンチの側まで来たものの、そこに杏寿郎はいなかった。代わりに、見知らぬ集団がそこにいた。

「そこの姉ちゃん、俺らと遊ばね?」

最悪だ。私の心の中で悪態をついた。

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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時

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