弐 強気 ページ2
例えるならば、彼は炎だ。黄色の髪先端は燃えるような赤で、まさに炎のように特徴的だ。
まだ年行かぬ少年だというのに、その剣技は大人を軽く圧倒するほど。
1を教えれば10を覚え、天才とは彼のためにある言葉なのだろう。しかも、ただの天才ではない。己の力に酔いしれず、鍛錬を軽んじることなく、どんな面倒なことにも全力でやる子供だった。
そんな彼にも、どうすれば良いのか悩む時がある。
例えば……。
「私はお前が嫌いだ!」
突然許嫁だと紹介されたかと思えば、その許嫁本人からのお前が嫌いだ発言。
その許嫁の少女は、杏寿郎と同い年か、やや年下といったくらいか、強気な態度のわりには小柄で、可愛らしい顔立ちをしていた。今は父親らしき人がゲンコツを食らわせ、それに涙ぐんでいる。
「そうカッカするな。お前の愛娘だろう?嫁入り前に顔に傷がついたらどうする」
杏寿郎の父、槇寿郎は、許嫁の父親を茶化すよう言うと、顔に傷が出来ても俺の娘は可愛い、と何とも言えない親バカ発言が返ってきた。
娘が可愛いから殴れないのではなく、娘があまりに可愛すぎるから殴っても可愛さは変わらないと少し変わった親バカ脳の持ち主らしい。
普段は悩むよりも行動が先の杏寿郎だが、俺はこの許嫁と上手くやっていけるのだろうかと、さすがに不安になった。
「私は婚約なんてしません」
なかなか気の強い少女に、杏寿郎は元気のいい子だと感心していた。一方で、杏寿郎のそんな態度が気に食わないのか、許嫁の少女は顔をしかめる。
「なら、こういうのはどうだ?」
少女の父親がある提案をした。
少女と杏寿郎を決闘させるのはどうだ、と。しかも、2人を遊ばせようと言っているようなノリで。
「だが、それでは杏寿郎の方に分がある。お前の娘が不利になりはしないか?」
少女を気遣っての言葉なのだが、バカにされたとでも思ったのか、少女は槇寿郎ではなく杏寿郎をキツく睨みつけた。
なぜ俺が、とショックを受けるよりも先に、杏寿郎は少女の真っ直ぐな目に見惚れていた。女性らしい可憐さや品格など全くない、揺らぎない双眸。それを、美しいと思った。
「なら、A家流のやり方でどうだ?それなら杏寿郎くんよりウチの娘の方が有利だ」
やるだろ?とどこか挑発的な笑みを浮かべ、己の娘に問いかけた。
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時