４３☆ ページ43
あ「ほんとに
来てよかったの？」
始発でやって来たキミが部屋に入るなり
遠慮がちに聞いてくる
あ「寝てないんだよね？
ごめんね、すぐ帰るから」
「会いたかった」
あ「あんなの言われたら
会わずにはいられないよ」
「Aはずっと頑張ってくれてるんだな」
「俺の会ってきたAは……
これから先のAは
ときどきちょっと泣いてしまうんだ」
「初めて手を繋いだときに泣いた
Aにとっては最後だから
その日を境にして
繋げない関係になっていくから
俺が‘‘付き合ってください’’
って言ったときに目が潤んだのもそうだね
付き合う前に戻ってくからだ
呼び方も裕太、裕太くん、玉森くん
になっていって……
俺もキミをAじゃなく、福寿さんって
他人行儀になっていって
どんどん巻き戻しになっていって
最後には知らない人みたいに
振舞わなきゃいけくなって」
キミの頬を掌で包む
「それってすごく辛いよな」
俺を見つめる眼差しが黒く濡れて
「がんばってんだな」
零れた
ぽろぽろと透明な粒が頬を滑り落ち
鼻を鳴らして、しゃくり上げる
「ごめんな」
涙で指を濡らしながら、俺は謝る
「Aが明日から会う俺は
Aにひどいことを言ってしまう
ごめんな、わからなくて辛くさせて
ごめんな」
キミが小さく首を振る
そして不器用に笑う
あ「裕太」
「ん？」
あ「ありがと」
朝陽に透き通る眼差しに俺が映ってる
「忘れないよ」
神聖な誓いに響いた
俺は優しくキスした
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作者名：ありす | 作成日時：2015年10月3日 20時
