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志麻side
諦めようと、そう思うことは何度もあった。けれど、何度も何度も俺をキラキラとした目で見つめるその瞳に、笑顔に、声に、釘付けになっていた。すぐ思ったことが口に出てしまうところ、欲張りなくせに変なところで消極的なところ。声、笑顔、顔。全てが愛おしくてたまらなくて。離れても尚、俺は彼女の望むかっこいい志麻さんで居てあげることは出来なかった。
｢辞めようって、言ったじゃないですか｣
彼女の涙に濡れた声に意識が手繰り寄せられた。言葉の割には切なそうな表情を浮かべる彼女にふっと頬が緩んだ。
｢……そんな顔してよく言うわ｣
そう言うと彼女はきょとんと目を丸くさせた。そんな彼女と繋がれた手を力任せに引っ張って抱き寄せた。ぎゅっと抱きしめると彼女は体を強ばらせる。
｢なんで、抵抗しなかったの｣
惜しむようにゆっくりと彼女を解放しながらそう言うと彼女は目を見開いた。
｢目が合ったでしょ、俺だってわかってたでしょ？｣
｢……それは、｣
一応、彼女の意思の確認のためにわざと顔を見せた。そして隙も与えた。本当に嫌ならば突き飛ばすことも嫌がることも出来たはずだ。それをしなかったって言うことは
｢……そういうことだって思ってもいいってこと？｣
そう言いながら腰に手を回し少しだけ引き寄せるとその顔がとたんに真っ赤に染まる。そして、数秒黙ったあと彼女は意を決したように口を開いた。
｢……私、本当は可能性があるならば彼女になりたいとか思っちゃうタイプなんですよ｣
｢知ってる｣
にんまりと笑みを浮かべると彼女はため息をついて俺の胸に顔を埋めた。
｢炎上しても責任はとりませんからね｣
｢いいよ。絶対バレんように隠し通すから｣
｢……そりゃー頼もしい｣
何時しか彼女に言ったはずの言葉がそのまま返されくすりと笑った。
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