悪魔が私に囁いた。【snr】 (ページ10)

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Aside

信じられない声が響き、段々と落ちて行っていた視界を一気に上に向けると信じられない程の甘ったるい瞳が私を見つめていた。どうやらこれは幻覚なんかじゃないらしい。

｢……なんで、｣

知ってて、私のそばに居てくれたの？

｢俺も君のこと騙してたんよ｣

｢私を……？｣

私が、じゃなくて？

｢君がスタッフじゃないことも知ってた。でも、君が欲しかった。だから、態とあれを落としたんよ｣

そう言いふと笑った彼がおもむろに席から立ち上がり、私の目の前に来て腕を引っ張ってその広い胸の中に私を閉じ込めた。

｢騙されてくれてありがとうな｣

ぶわり、涙が溢れた。

｢ずるい、ずるい……！｣

私ばっか余裕なくて、貴方ばっかり余裕があって。私が悪いのに、私のせいになんてさせてくれないずるい大人。

｢そう、俺はずるい男。だから全部俺のせいにして｣

ははっ、と乾いた笑いを浮かべながらそう言ってみせる彼に少しでもの仕返しのつもりでぎゅっと強く抱きしめると彼も同じように強く抱き締めてきた。

｢それで？俺と付き合うのは嫌なん？｣

｢嫌なわけないじゃないですか！｣

そう精一杯叫ぶと彼は失笑を零し、私の背中をポンポンと叩いた。

｢今日から彼女よろしくな。A｣

たまには悪魔に従ってみてもいいかもしれない。それで君とこうなれたんだから。