おとな ページ2
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目を光らせながら私の言葉に耳を傾けてくれる彼を見つめながら、口を開く。
「…おとなは、辛いと思う。束縛されてる。お母さんもお父さんも、そうだから」
私と彼の沈黙を少しでも彩ろうと、蝉の声やぬるい風、葉のかすれる音がより一層強く、大きくなった気がした。
でも、それは私の心には届かない。
やっぱり言うんじゃなかった。
本当はこんな考え、今すぐにでも捨てたかった。
おとなに希望を持ちたかった。
けどやっぱり、できなくて。
両親の顔を見る度、この考えはより一層強くなる。
痩けた頬、覇気のない目。
口を開けば上司への愚痴、会社への不満ばかり。
ああ、おとなって辛いんだ、苦しいんだ。
私の両親は、会社に、そしておとなであることに束縛され、呪われているようだった。
「ごめん、やっぱ」
「俺はおとなって、ジユウでカッコイイと思う!」
「?…うん」
「だから、俺がおとなになったらそれをショウメイしてやる!!!!!おとなはジユウでカッコイイんだぞって!」
「…本当?」
「ほんと!!」
陽の光が彼の姿を明るく照らす。
眩しかった。
その光も、彼の姿も。____言葉も。
今にも溢れそうな涙を堪え、彼を見つめる。
「…うん、楽しみにしてる」
「おう!」
やっぱりきみは、ずるい。
堪えきれなかった涙が、頬を優しく伝った。
おとなというものに、少しだけ希望を持てた気がした。
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ぽみず(プロフ) - 千々さん» 嬉しいです、ありがとうございます。まさかコメントを頂けるなんて思っていなかったので…。こちらこそ、この作品を見つけてくださり、本当にありがとうございました! (2020年7月11日 12時) (レス) id: 3b48cd3c74 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 失礼します。私はあまりハイキューの作品を見ないのですが、新着作品を漁っていたらこのお話を見つけました。夢主ちゃんの心情が読みとれて、とても面白かったです。この作品を作ってくださりありがとうございました。 (2020年7月11日 12時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽみず | 作成日時:2020年7月3日 14時