第39話 子鹿 ページ5
「きょ、今日は鬼が出ないのかな…音がしないねねねね…」
『善逸さん、善逸さん、貴方の周りにだけ小規模な地震が起きてるんじゃっていうくらい揺れてますけど善逸さん』
「恐怖の！恐怖の匂いが染み付いてるのこの町！！昼間もしてたけど夜になると一層に強くなってる！！町の人達が怯えてるんだ！そんなの俺が怯えないわけないでしょねぇそうでしょ！！！」
『あ、はい…』
生まれたての子鹿のごとく震える善逸さんの遅い歩みに合わせて歩く。
大丈夫だろうか。いや、この人の聴覚は疑っていないから鬼が出ていないことは確かだ。それは大丈夫。
ただ鬼が出たと音で察知しても動けるのかこの人。
『そんなに強い、恐れなのですか？』
Aが尋ねると、善逸はうん、と頷いて両の手で耳を塞ぐ
「……誰も彼もが怯えてる、凄まじい恐怖の音…。」
それでも尚、聞こえる恐怖の音に眉を顰める。
『どういう、任務なんですか？』
「……気分が悪くなる話なんだけど、聴く？正直、Aちゃんには聞いて欲しくない。」
でも、俺は君の意見を尊重したいから、そう言って口を噤む。
善逸さんは、私が人に戻ることを信じている。
私が人に戻った先で、普通の人生を、普通の幸せを歩むことを信じてる。
でも、それはありえない事だ。決して。絶対に。
明日を信じていた未来を裏切られて、絶対という言葉を信じられなくなった。
この人が交してくれた絶対でさえ…＿＿
それでも、絶対と断言出来る。
私の人生にもう、普通はありえない。
『諦めた幸せを貴方がもう一度くれた。それ以上にまだ、普通を望めはしないんだよ、善逸さん』
「………一ヶ月前に、1人の少女が消えた。おやすみと額にキスを落としたその日の夜に。」
善逸さんがゆっくりと語り出す。
仲のいい家族だった。幸せを絵に書いたような家族だった。
その日を境に、その絵はびりびりと、何が描いてあったのかさえわからぬほどに、破られた。
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いーさん(プロフ) - 夜月悠さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！とっても嬉しいです！はい！頑張らせて頂きます！ありがとうございます！ (2019年10月19日 15時) (
レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
夜月悠(プロフ) - 貴方の作品を見ていると、心揺さぶられます。文章を読んでいるだけなのに自然と感情移入してしまうほどの、文章を書く貴方は凄いです！長々と話してしまいそうなので…言いたいことだけ言いますね！！"無理せず更新頑張ってください！！応援してます！！"です！！ (2019年10月19日 1時) (レス) id: 8014d49c6f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いーさん | 作成日時：2019年10月18日 22時
