第9話 善人 ページ10
「君が人を殺す時、君がその人を人殺しの親にしてしまう時は、必ず俺が君の頸を斬る!絶対に!」
そう言って手を握った手は、声は、酷く震えていて、頼りなくて
でもどこか、安心出来る
『必ず…?絶対…?』
「必ず!絶対!」
『お父さんは、天国で誇れる人であれる?』
「鬼になっても強い理性を保てる娘を育てたんだって!きっと鼻高々に胸を張れるようにする!」
『……私、生きててもいい?』
「人が死ななきゃいけない理由なんてない、人を殺さない君は鬼なんかじゃない、人なんだから、君が死ななきゃならない理由なんてない」
はっきりと、目を見つめて返してくれる。
あぁ、なんだか似てる。派手な容貌と少しヘタレっぽいところは全くだけれど
誰かが哀しんでいたら、そこに無償で手を伸ばす。
人が悲しんでいた、なんて世の常理で、貴方達は動こうとする。
実際に動く。
『う、ぁ…たす、けて…』
流すまいと堪えていた涙が溢れる。
『助けて…!助けて!痛い、苦しい、気持ち悪い!何かを食べても味がしなくて!綿でも口に含んでるみたいで!その癖あの日!血塗れで倒れるお父さんを思い出したら喉が鳴るんだ!』
「…それでもよく耐えたね、よく人里に降りなかったね」
『今も貴方を食べてしまいたいって、思ってしまう!』
「それは怖いなぁ」
『絶対思ってない〜!』
わんわん泣き出したAに、少年は一瞬吃驚したが、それでもやっと年相応の反応を見せたAに小さく、優しく笑ってもう一度手を握り直す
恐怖はもう殆どなく、今はもう年下の子をあやす感じでしかない。
それは鬼であるAが流暢に言葉を話すのもあるだろうが、根に少年の優しさがある故だ。
『うぇ…ひっく』
「泣き止んだ?大人しい子かと思ったけど結構泣く時は泣くタイプなんだ」
『ぅ…貴方は、道端でもどこでも、恥ずかしげもなく号泣しそうなタイプですね…』
「はは、ノーコメントで…君、名前は?」
優しく少年が語りかける。
A、と名乗ろうとして噤む。
Aには姓がない。
母には姓がなかったし、母がAを産むと同時にいなくなった父の姓を、母は決してAに教えなかった。
名乗ってしまったら、迷惑がかかる。
そんなのはわかっていた。
あの家から鬼がでた、人殺しがでたって、後ろ指を指されるかもしれない。
でも、でも、どうか許して欲しい。
『松……松 A。』
「俺は我妻善逸。よろしくね、Aちゃん」
貴方達と過ごせない私に、名前だけでもどうか、共に在らせて欲しい。
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いーさん(プロフ) - 満月雪兎さん» すみません、返信遅くなりました。ありがとうございます!頑張りますね! (2019年8月20日 19時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
満月雪兎(プロフ) - 『父を殺した者への復讐を誓う』というところが滝夜叉姫っぽくて好きです。更新頑張ってください! (2019年8月11日 12時) (レス) id: 5acf868e91 (このIDを非表示/違反報告)
いーさん(プロフ) - レイラさん» ありがとうございます!頑張らせていただきますね! (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
いーさん(プロフ) - 甘空さん» コメントありがとうございます!そう言って貰えるととても嬉しいです!応援に応えられるよう頑張りますね!いえいえ!本当にありがとうございます! (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - 面白かったです。涙腺が崩壊しました。応援しています。頑張ってください。 (2019年8月8日 5時) (レス) id: 16a7c15423 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いーさん | 作成日時:2019年6月4日 23時