第7話 訪問者 ページ8
どれくらい、そうしていただろう。
時間が曖昧で、ただわかるのは冬の季節が終わって春が来たということだけ。
その間、何も食べていないのに空腹はない。
『……力が入らない…立てないよ、旦那様……』
そのくせ涙は止まらないのだから、本当に脱水にならないのが不思議な程だ。
じゃりっと、音がする。
誰かが来た、まずい、まずい、飢餓がないのは人が目の前にいないからかもしれない、もし目の前に現れたら
「ご、ごめんください」
『…ッ帰って、ください…!』
かけられた声は酷く怯えていて、それでもそれに気を遣う余裕なんてなくて、少し声を荒らげてしまう。
「い、いや!でも!」
『帰って下さい!ここに来てはいけない!』
「な、なんでですか!」
『なんででもです!そもそも何故貴方はここに来たのですか、!お腹を空かしているのなら申し訳ないですがもう少し先のひとざ』
「助けてって、音が聞こえたから」
怯えている少年は、勇気を振り絞ったように私の言葉を遮った。
『そんな、こと…』
「言ってないかもしれない!でも、そういう音がしたんだ!俺取り柄ないけどさ!耳はいいから!君が、辛くて苦しくて、哀しくて!どうしようもないって音が!
俺には確かに聞こえたんだよ!」
また涙が溢れそうになる。
どれだけ泣けば気が済むんだ、これ以上泣いてどうなるっていうんだ。
『…お気遣い、ありがとうございます…でも、私は…』
「鬼、なんだよね?」
『え?』
鬼、その言葉がどうにもしっくり来た。
そうか、私は鬼になったのか
「そのくらいわかってるよ、耳がいいって言ったでしょ?でも、君からは嫌な音がしない、人を喰った音がしない」
『まだ、たべてないけど…あの時、食べたくてどうしようもなかった…!また…』
「でもその時我慢できたんでしょ!ならきっと大丈夫だよ!俺の知り合いにもね、君と同じように鬼でも人を喰ってない子がいるんだよ!」
少年が努めて明るく話してくれる。
そうか、同じような子もいるのか…でも、でも…またあんな風になって、
『人を殺してからじゃ、遅いんだよ…私はどうしても、あの人を人殺しの親に出来ない…』
「………
俺が君を斬るから!」
少年が無理やりドアをこじ開けて入り込んでくる
『え、』
そうして私の手を無理やりとるとギュッと握り込む
「君が人を殺しそうになったら、俺が君を斬るよ!君が人を殺す時、君がその人を人殺しの親にしてしまう時は、
必ず俺が君の頸を斬る!絶対に!」
675人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いーさん(プロフ) - 満月雪兎さん» すみません、返信遅くなりました。ありがとうございます!頑張りますね! (2019年8月20日 19時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
満月雪兎(プロフ) - 『父を殺した者への復讐を誓う』というところが滝夜叉姫っぽくて好きです。更新頑張ってください! (2019年8月11日 12時) (レス) id: 5acf868e91 (このIDを非表示/違反報告)
いーさん(プロフ) - レイラさん» ありがとうございます!頑張らせていただきますね! (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
いーさん(プロフ) - 甘空さん» コメントありがとうございます!そう言って貰えるととても嬉しいです!応援に応えられるよう頑張りますね!いえいえ!本当にありがとうございます! (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - 面白かったです。涙腺が崩壊しました。応援しています。頑張ってください。 (2019年8月8日 5時) (レス) id: 16a7c15423 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いーさん | 作成日時:2019年6月4日 23時