第17話 箍 ページ18
Aが、表情のない顔でしのぶを見る。
わからない、わからない。
私は今どんな顔をしている?どんな顔をするべきだ?
怒りであって怒りでない。
哀しみであって哀しみではない。
ありとあらゆる感情が、欲張りな程に身のうちを支配する。
『そんなに許せないと言うなら、どうしてお父さんが死ぬ前にあいつを殺してくれなかったの?』
ずっとずっと、思っていた。
それこそ善逸さんが鬼殺隊の話をしてくれた時から、鬼がずっと前からいたことを話してくれた時から。
どうして、殺してくれていなかったのだ。
わかっている、簡単なことじゃないからだ。単純な力でいえば鬼が勝るからだ。
でも、それでも____
『凄く手馴れてた、あいつが人を殺した数は1人2人じゃない。例えお父さんだけだったとしても、なんで貴方はここを動かないの?なんであいつを殺しに行ってくれないの?
貴方達があいつを殺してくれないから、お父さんが死んだんじゃない、私はこんな体になったんじゃない!』
1度決壊した何かは直らない。
ダムでせき止めていた水が溢れるように、言葉が止まらない
『私達を護ってくれなかったのは貴方達じゃない!護れ、なんて手前勝手だけどさ!鬼の情報を隠したのはそっちでしょ?言ってくれれば私はお父さんを外になんて出さなかったよ!隠したのが私達のためでも、私は日々を怯えるよりも、何も知らぬまま突然死ぬ方がやだよ!隠すんなら護ってよ!
どうして貴方は、お父さんを殺したあいつじゃなくて私を殺そうとするの?
どうして貴方は、私をこんなにした元凶じゃなくて私を殺そうとするの?
どうして貴方は、私達を護れなかった上で私を悪と断ずるの
どうして貴方は、私を裁く側であれるの!』
息継ぎも儘ならぬままに言い切る。
言ってはならないことなのだろう。この居間に通される前、人の頃と比べられぬほど鋭くなった嗅覚に、人の血の匂いがこびりついた。
鬼は人より強い。
その鬼を狩る人達が、どんな想いで、どんな体験をしているか、など、火を見るより明らかだ。
それでもAだって人間だ。例え鬼であろうと心は人のままだ。
これほどの侮辱を、Aは生前にだって受けたことはない。
お前は人殺し、などと、人を殺すような奴などと、
私を人として見もしなかった母親にさえ言われたことは無い_______!
『貴方達があいつを野放しにしたからこうなったのに、どうして貴方は、私を一方的に悪と言い張れる…!
貴方達があいつを殺してくれてれば、私は、
お父さんと、明日を笑っていられたのに!』
675人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いーさん(プロフ) - 満月雪兎さん» すみません、返信遅くなりました。ありがとうございます!頑張りますね! (2019年8月20日 19時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
満月雪兎(プロフ) - 『父を殺した者への復讐を誓う』というところが滝夜叉姫っぽくて好きです。更新頑張ってください! (2019年8月11日 12時) (レス) id: 5acf868e91 (このIDを非表示/違反報告)
いーさん(プロフ) - レイラさん» ありがとうございます!頑張らせていただきますね! (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
いーさん(プロフ) - 甘空さん» コメントありがとうございます!そう言って貰えるととても嬉しいです!応援に応えられるよう頑張りますね!いえいえ!本当にありがとうございます! (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - 面白かったです。涙腺が崩壊しました。応援しています。頑張ってください。 (2019年8月8日 5時) (レス) id: 16a7c15423 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いーさん | 作成日時:2019年6月4日 23時