No.51 ページ7
「豚を捕まえて料理。一次試験よりずっと楽でいいなあ。」
長身の遮光眼鏡をかけた人が嬉しそうに云った。
確かに。豚を捕まえて料理すればいいだけなら難しいことではないように思える。
何せ、一次試験は本当に酷かった。
此れでも体力には自信がある方だから、例え二次試験会場までの距離が途轍もなかったとしても、自分一人で走る分には然程苦にならなかった筈なのだ。
問題は、あの太宰さんが一緒だったこと。
先ず、太宰さんの発想で強引に重くて暑い着ぐるみを着せられていた上、走り出して五分も経たないうちに当の本人は疲れたと駄々を捏ね、置いて行く訳にもいかず、渋々太宰さんを背負いながら走る羽目になった。
更に走っている最中、同じく着ぐるみを着た妙な二人組に遭遇した。他にも着ぐるみを着た人がいるなんて思いもしなかったから驚きはしたけれど、向こうにも何か事情があるのだろうと思い、走ることに集中しようとした。
すると、背中の太宰さんが急に速度を上げろと云う。
理由を聞いても応えてくれず、仕方なく速度を上げると、何を思ったのか太宰さんはその二人組に挑発し始めたのだ。
其れに怒った二人組が物凄い剣幕(表情は着ぐるみのせいで見えなかったけれど)で僕等を追ってきた。
僕は怖くて、追いつかれないように更に速度を上げた。当然、二人組も速度を上げてきた。
こうして唯の持久走だった筈が、着ぐるみを着た者同士の奇妙な鬼ごっこになってしまったのだ。
後に太宰さんに聞いた。何故挑発などしたのかと。彼は答えた。『気に食わなかったから』と。
「はぁ…」
思い返すだけで溜息が出る。
もう走るのも何かに追いかけられる恐怖も御免だ…
豚を探そう。今は僕が豚を追いかける立場にある。
捕まえたら、後はAさんに任せて__
「あ、危ない!!!」
「___え?」
黒いツンツン髪の少年の声にハッとするが遅かった。一瞬の浮遊感の後、僕は坂を転がり落ちていた。
「痛た…」
「大丈夫?!白い虎のおにい__!」
駆けつけてくれた少年の声が不自然に止まった。
気になって僕も顔を上げる。
「ブヒッブヒッ」
豚がいた。
否、こんなの豚じゃない。
僕が知っている豚はこんなに大きくない。
僕が知っている豚は角など生えていない。
僕が知っている豚は___
「おい、骨食ってんぞ…」
__骨など、食べない。
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マニ。(プロフ) - 猫ノ栞さん» ✉️。はい!ボードの方で仲良くしましょうね!宜しくお願い致します💖 (12月5日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
猫ノ栞(プロフ) - マニ。さん» よかったです!これからよろしくお願いします🌸 (12月5日 19時) (レス) id: 218254b255 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - 猫ノ栞さん» ✉️。平気です!ちゃん届いてますし、空欄ではないので大丈夫です!💖 (12月5日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
猫ノ栞(プロフ) - マニ。さん» 再度送って見ました!届いてますでしょうか? (12月5日 19時) (レス) id: 218254b255 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - 猫ノ栞さん» ✉️。おけです!ボードの返事お待ちしています。猫ノ栞さん!☺️ (12月5日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫ノ栞 | 作成日時:2018年12月30日 16時