寄せ集め。 (ページ36)

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お風呂もご飯も、全部ひとりで済ませてから転がってみたベッドの上。

することなんて何もないけど眠れるはずがなかった。

飲みすぎてないかな。

ちゃんと帰って来れるかな。

俺のこと、忘れてないかな。

そうやってどれくらい経っただろう。
部屋の外から声が聞こえた。

『こおきくん〜！』

え、

反射的に飛び起きて玄関へ走る。

扉を開けるとそこに居たのは

ほんのりと頬を赤く染めた彼女と、それを支える見知らぬ男だった。

「っお前まじ声でかすぎ」

『うるさいわくちゃん』

確実に仲の良さそうなその様子に苦しくなる。
そいつの手は彼女の細い腰に回っていて、思わず目を逸らした。

ほらね、こういう予感こそ当たっちゃうんだ。

人前に立つのは割と慣れてる方なはずなのにこんな時には声が出ない。
早く俺のだって言わなきゃって、そう思う癖に頭は真っ白で。

「っあーもう！とりあえず返すんで！さっさと寝かしてやってください」

そうやって押し付けられた彼女の身体。

また連絡すっから、なんてさらりとその頭を撫でて帰って行ったそいつの背中を睨みつけた。

勝てなかった。なにもかも。

年上だからなのか、彼女との歴史なのか、それともただあの男がそういう奴なのか分からないけどあんな余裕のある態度、俺にはとれるはずがない。

悪い予感が全部悪いように当たっていって、このままいったら俺は忘れられちゃうよ。

『こうきくん、ねてた？』

「っいや、まだだけど」

『そっかぁ』

傷を抉るって、分かってて聞いた。

「あの人、仲良いの？」

あの人？とちょっと考える素振りを見せたあと君は言う。

『わくのこと？高校のともだちなの。ひどいんだよ！
ひさしぶりだったのにあの頃となーんにも変わってない』

酔ってる人の言うことなんて真に受けるもんじゃない。
でも彼女がいうあの頃、が分からなくて悔しかった。

ねえAちゃん。

ほんとはあの人がいいんじゃない？

俺なんかよりきっとキラキラしてて、男らしくて、Aちゃんのことなんでも知ってて。

俺のことなんか、早いとこやめちゃえばいい。

「Aちゃん」

『ん〜？』

「あの人のとこ行きなよ」

口をついたのは、そんな言葉だった。

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