【nrs】長崎の暴走列車、ブレーキを担当しております。【男主】 (ページ8)

今日:6 hit、昨日:18 hit、合計:23,214 hit

8 ページ8

仕事が終わり、退勤後。
今日はなんだかお酒を飲みたい気分だったので缶のお酒とおつまみをスーパーで購入し、るんるん気分で店を後にした。せっかくだしこの間読んだミステリー小説のドラマを見返してみようか。小説を見たあとなら、違う視点から見れるかもしれない。

そう、思っていたのに。

「なんでいるのさ」
「んー？お邪魔しちゃあかんかった？LINEしたのに既読つかんかったからとりあえずおうちの前行っちゃった。急に来てごめんなさいやけど」
「るすくん早口っすね」

きゅるんとあざとい顔でこちらを覗き見ながら俺に喋らせる暇を与えないのはluz。そんなluzを見ておつまみを食べながら笑い転げるのはめいちゃん。2人ともなるせの友人で活動者だ。

スーパーの袋を揺らしながら帰宅したら、家の前で彼らは待っていたのだ。なぜ？と首を傾げた自分に来ちゃった♡なんて言う2人を引きずって部屋に連れ込むと、自分たちで買ってきたらしい酒やらつまみやらを出してやんややんやと騒ぎ出してしまったのだ。2人ともよくこうしてアポありのようなないような凸をしてくる。毎度迎え入れてしまう俺も俺だが。

「……一般人の家に歌い手2人が上がり込んでるの、やばくないの？」
「えっ、一般人なの？」
「一般人だが？」
「なるせのマネージャーかと思ってた！違うんや？」
「違うよ、誘われてるけど断ってるから」
「なんで断ってるんすか、それ」

めいちゃんの核心に着くような質問にぐっと詰まる。どう答えようか。

「……今の仕事、天職だから」

捻り出したのはそんなくだらない回答。それでも何かを察してくれたのか2人ともそれ以上は掘り下げては来なかった。
ほっとしたのもつかの間、2人は浴びるように酒を飲み始めて俺のゲーム機を勝手に取りだし騒ぎながらスマブラを始めたと思ったらそのまま2人ともすとんっと落っこちるようにして眠りこけてしまった。

「……片付け俺ですかね、これ」

大きなため息をつくと共に爆睡した2人の傍で転がる感をゴミ袋に突っ込む。片付けた部屋に敷いた客用布団に寝かしつけて、自分も眠ろうと寝室へ向かった。
2人が騒いでくれたから、今日は余計なことを考えずぐっすり眠ることができそうだ。
落ちる意識の中、遠くの方でピアノの音色がぽろん、と静かに鳴った気がした。