【nrs】長崎の暴走列車、ブレーキを担当しております。【男主】 (ページ39)

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2週間の間、新しく入ってきたバイトの子に仕事を教えつつ、俺は惜しまれて職を手放した。
最後の夜は新人くんと俺と、店長と奥さんの4人で俺の送別会を開いてくれて、豪華なご飯に囲まれてお酒を飲んでお別れをした。まるで我が子のように可愛がってくれた店長夫婦とも今日で他人だ。ひどく寂しくて、帰り道で少しだけ泣いた。

最近の俺は涙脆くなったと思う。歳だろうか。帰宅するとおむすびは俺の腫れた目元を見て心配したのかきょろきょろと見回してこちらに寄ってきた。大丈夫？と問いかけるようなその目にまたうるっとしてしまったのは秘密だ。

翌日から1ヶ月ほど、俺はなるせのスタッフになるためになるせ本人から業務内容を教わったり、luzのスタッフやなるせのスタッフから業務のノウハウを教わっていた。
慌ただしい日々が過ぎて、朝から晩まで働き詰めになり、休日は一日中寝こけてしまうなんてこともあった。
研修期間も過ぎ、編集、ミックス、事務作業その他もろもろを教えて貰った俺の初現場。なるせの録音に立ち会い、そのままサポート役としてミックスを担当した。
お前才能あるよ、なんてキラキラした瞳で騒ぐなるせに少し照れて嬉しくなって舞い上がって、その日はなるせにご飯を奢った。

今まで接したことの無いような業界の人と関わりを持ったことで俺の視野は格段に広くなった気がした。今まで気づけなかったこの世界ならではの話だとかも分かるようになり、俺は見事に仕事仲間に馴染むことができた。

スーパーで買った夕飯の材料を揺らしつつ、ビニール袋の音を奏でる俺の右手は何となく手持ち無沙汰だった。いつもなら人もいないし、と羞恥心を捨て袋を振って歩くところだが、今日は人がいるどころか中に卵が入っている。振ったら大惨事である。
そわそわとした気分の脳みそが、これから向かうなるせの家で作るご飯のメニューを考え出す。
今日は洋食にしてやろうかなぁ、最近ずっと彼の家では和食しか作ってないし。そう決めると、少しだけ気分が上がって足が早くなった。少しだけ大きく揺れた袋に慌てて、すぐに歩調は戻したけれど。

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