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しゅーずの家に泊まった次の日の朝、俺はゆっくりとした目覚めを迎えた。正確に言うと、ゆっくりと眠り、しゅーずによって揺り起こされたのだが。

「おはよ、A。朝ごはん」
「作ってくれんの神じゃん……」

でしょ、と悪戯っ子のように笑うしゅーずに促されて顔を洗い、リビングに向かうとがつがつとご飯を食らう犬、大福と、いい匂いがする洋食のテーブルが出迎えてくれた。

「今日、1日俺の洋服見るの付き合ってよ」
「……まあいいけど。」

そう言って、仕事の休みの連絡を入れると、何かを察しているらしいじいさんはゆっくりしなさい、と言ってくれた。彼は俺の恩人だ。きっと、あの頃のように何もかもお見通しなんだろう。

2人で食べ終わった朝食を片付け、しゅーずの服をかりて2人で外に出る。少し眩しい日差しに照らされてきらきらと輝く街並みに、なんだか心が踊った。2人で電車を乗り継いでアパレルショップが立ち並ぶお洒落な街に出た。プチプライスとも言えるくらいのお手軽なお値段で、シンプルかつ清潔感のある服を選ぶしゅーずの趣味に合わせて、最初は落ち着いた茶、黒、紺を選んでいたが、そのうち自分の好みに寄っていってパステルカラーや深みのある赤を選んでしゅーずに笑われた。
趣味が丸出しだ、と大笑いするしゅーずに少し不貞腐れていると、試着室に引っ込んだしゅーずが暫くして、俺が進めた臙脂色のシャツを着て出てきたしゅーずは俺の前で、鏡に向かってくるりと回って見せた。

「めっちゃ似合うじゃん。俺が買ってあげるからそれ着てくれ」
「え、そんな?そんなに好き?なら買うよ。今度遊ぶ時着てあげる」

そう言って嬉しそうに笑ったしゅーずは店員さんに慣れた手つきで服を手渡し、今度は俺の服だ、と手を引っ張った。

「え?俺はいいよ別にいらん」
「は?Aの好みの服買うんだからAも俺好みの服買うでしょ。」

当たり前のように言って見せたしゅーずによって、結局俺も青緑とレモン色が鮮やかにマーブル模様を飾るシャツを買わされた。
まだまだ行くぞ、と俺を催促するしゅーずは、俺より年上なのになぜだか異様にテンションが高い。まるで友達と遊びに行く高校生のテンションだ。その後もお互いに服を見繕って、帰る頃には互いの手にはたくさんのショッパーが提がっていた。

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作者名: | 作成日時:2022年1月16日 22時

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