【nrs】長崎の暴走列車、ブレーキを担当しております。【男主】 (ページ27)

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カラン、とベルの音が軽くなって招き入れられた中にはスタッフらしき人が十数人いて和気あいあいと雑談していた。その中の1人がこちらに気が付き、ひらひらと手を振った。それにしゅーずが手を振り返し、逃がさないと言わんばかりに俺の腕を掴んだままその輪の中に連れていかれた。

「すみません、おまたせしました。」
「いいよいいよ、しゅーずくんが言ってた人ってその人？イケメンさんだねぇ〜」

けらけらと笑って招き入れてくれたスタッフさんは俺のことを見ながらしばらく考えて思いついたように顔を明るくさせた。

「ねぇ！君力仕事はできるかな！？お手伝い頼んでもいい？」

そう言うやいなやダンボールを手際よく渡され、これはそこ、あれはそこ、と指示をされて何を言うまでもなく俺は動かされた。その間にしゅーずはその様子を暫く眺めていたが、撮影の確認があるとその場から離れて、カメラマンさんと撮影場所の確認に行ってしまった。
1人置いていかれ、それどころか何故か働かせられて頭の中は疑問しか思い浮かばないが、誰かに突っ込むことも無く時間はすぎた。
夕方近くになり、やっと落ち着いた撮影の合間にしゅーずがこちらに寄ってくる。

「手伝いしてくれてありがと〜」
「いやいいけど……え、なに？俺何で呼ばれたの？バイト？」
「いやいや、Aにも知って欲しかったの。楽しいでしょ？この雰囲気。」

「沢山のスタッフさんが関わって、沢山のファンに支えられて成り立ってる活動だよ。Aがもし、ここに入ったとして、何か失敗しても誰も何も言わない。もちろん俺も、なるせだって、慰めはするけど怒りはしない。」

その言葉に思わず息を飲む。

「ねぇ、A。僕はAの仕事が好きだよ。本に囲まれてるAは楽しそうだ。やりたいことがやれてるのはすごくいいことだと思う。でもね、やりたいことは1つじゃなくていいんだよ。欲張っていいんだ。その権利が、君にもちゃんとあるから。」

そう言って撫でられた頭からじわりと熱が伝わって、それが俺の冷めた涙腺を緩くした。溢れ出た滴は、まるで俺が今まで耐えてきた全てを吐き出してしまうようにこぼれた。