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「A〜、おきて〜おきろ〜」
「ぅ゛……、なに……」

「俺今日打ち合わせあんだわ、出る時鍵閉めてけよ」
「おけ、ありがと……いってらっしゃい」
「う〜い」

パタン、と音を立ててドアが閉まり、部屋は静寂に包まれた。昨夜は衝撃なことをなるせから聞いてしまって勢いで酒を沢山飲んでしまった。いつもなら酔わない量だったが、動揺もあってかすっかり酔ってしまったのである。おかげで二日酔いだ。しんどい。ぐらぐらする頭を抑えつつ、キッチンに向かって戸棚のインスタントの味噌汁を拝借する。俺がスーパーで買ってきたなすの味噌汁だ。意外と美味くて俺もなるせもハマっている。お湯を沸かしている間にスマホの電源をつけて連絡を確認してみれば、luzからの飲みのお誘いとめいちゃんからのマリカのお誘いとなるせからのマネージャー勧誘と二日酔いの心配が溢れていた。それらに適当に一言で返信して、お湯を注いで味噌汁を作る。1口啜るとほっとするような温かさが喉にしみてぼーっとしていた頭も心做しかクリアになった気がした。

「……行くかあ」

なるせの部屋の鍵をつかみ、持ってきた荷物をカバンに詰めて部屋を出る。戸締りをしっかり確認してから一旦家に向かった。
帰宅して、犬の餌やり、洗濯物を片付けて軽く掃除をしてから職場に向かう。本屋は少し客がいて、挨拶をしながら中に入ると店長がけらけらと笑いながら二日酔い?と尋ねてきた。

「……俺そんなに顔色悪いっすか?」
「まあまあだね、近くで見ると分かるくらいだよ」
「じゃあいけますね、大丈夫です」

辛かったら早上がりでもいいよ、と言って店長は奥に引っ込んだ。3人ほど並んだレジを回して、そこからは暇だったので結局、いつも通りの勤務をして1人もいない時は本を読んで過ごした。

「……あ、あれの返事しないと」

ふ、と思い出したのは天月さんの件。正直俺はファンだし気が引ける。でも推しの望みを断るなんてできない。また後で考えよう。とりあえず今は目の前にあるミステリー小説に意識を向けて、現実逃避をしてみることにした。

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作者名: | 作成日時:2022年1月16日 22時

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