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昼下がりの陽気な天気の下、ビニール袋を揺らしてなるせの家へ向かっていた。
貰った鍵を使い中に入り、万が一のために音を立てないようにそっと歩く。前回のように迷惑をかけてはいけないと学んだのだ。
幸いにも、今日は生放送はしていないようでトイレから出てきたところを偶然鉢合わせた。
「う゛わぁっ!?」
「おわ、お邪魔しまーす」
「お、お前……もしかして幽霊か?」
「生きてるわ、流石にまた乱入したらまずいと思って」
いやいいけど、なんて言うなるせに続いてリビングに入る。相変わらず生活感満載で前回来た時より些か汚くなった部屋を掃除しながら換気のためにカーテンと窓を開けた。
「ぅ゛っ、まぶし」
「お前は吸血鬼なんか?陽射し浴びないと健康に悪いぞ」
「俺夜型だから……」
洗濯物は洗濯機に。
溜まった食器は食洗機に。
買ってきたものは冷蔵庫に。
「昼食った?」
「さっきラーメン食べた」
「そ、じゃあおやつ食う?」
そう言って渡したのはアイス。彼の好きなチョコ系の少しお高いカップアイスだ。
「お前のそういうとこほんとラブちなんだが?」
「ちょっときもいね」
スルーしてスプーンも渡すとぶつくさ言いながらも食べ始めた。少し高いから味が濃いらしい。俺にはよく分からないけど。
「夕飯のリクエストある?」
「俺いま鍋食べたい」
「あー……いいねぇ、豆乳鍋でいい?」
「サイコー!」
わざわざ挙手してくれた彼のリクエストに答えて今日は豆乳鍋になった。材料足りたかな〜なんて冷蔵庫を覗きながら、なんだかんだ自分もアイスを食べたくなってしまって彼のために買ってきたもうひとつのカップアイスを取り出した。
ベリー系のアイスは少し甘酸っぱくて、ショッキングピンクの不健康そうな色が味覚に刺激を与えて、なんだか口の中が弾けている気がした。
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作者名:橘 | 作成日時:2022年1月16日 22時