16 ページ16
「…なんかお兄ちゃんもこんな仕事って言ってなかったっけ?」
『良く覚えてるね言ってたよ。凄いよねぇ遠い存在になっちゃった。ユリもファンいるし…』
そう思い出せば、彼女は学生時代キャーとは言われていたが、告白というのは聞いたことがなかった。またカップルとか恋愛については無縁。
…あんまり調べないでおこう。
『私にはでっかいファンがいるからな〜。』
「心強いでしょ」
『まあね』
彼女は、夜になると機嫌がいい。
いつもは"そんな事ない”みたいな冷たい返しがくるのに。
しかもちょっと声が高い。
可愛いなあ。
「気分屋だねぇ」
『ダリくんはさ、アクドルが教師。どっちのほうが良かった?』
「教師かなあ。一緒だしね〜」
『ま確かに。』
「アクドル目指してるの?」
『うんん。家族があっちの世界の方だからなんていうか一線置かれてるなって』
「妹さん結婚したんでしょー?」
『うん。けど化粧で化けるって有名だったんだよ。』
暗い顔をしている彼女。
ダリは口を開く。
「ごめんね僕邪魔だねぇ」
『え…』
間違えた。地雷を踏んだ。彼は瞬時にそう思っただろう。
唯一喧嘩を恐れていたこと。
『そんな事ないよ…!』
身を乗り出してまで誤解をまねこうとする彼女。
どうしてそんな事を言うのだろう。
私が求めているのはその言葉じゃない。
彼女は泣きそうになる。
何故今そんな事を言うのだ。
そして何でそんな顔をするのか。
優しくて、私を見下ろしているかの顔。
きっと見下ろしてなんかいない。彼だもん。
私がそうやって認識してるだけで…
"僕が邪魔"ダリくんはいつもそんな事を思いながら?私と話してた?
それとも、ダリくんが私に思っていることかもしれない。
そして彼女は気付いていない。
自分の世界に入っているのだ。
何度も何度も彼は「違うよ」と言っているのに
まあこの喧嘩はどっちもどっち。
『何でそんな事言うの…?』
抱きしめようとしているのに手を前にして彼女は、絶望みたいな顔をする。
『ごめん私ちょっとユリに泊めてもらうわ』
彼女は逃げるようにと玄関から出ていった。
さて一方彼は。
(さてどうしようかなあ…)
可哀想。内心軽く受け取ってるが、彼は焦っている。
しかしこれは喧嘩ではない。彼女がただ考えすぎてしまっただけ。それさえ解ければ…。
それが難しい。
彼女はハニー家。愛が重たいのだぞ。
もっともっと悪い方向に進むに違いない。
55人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぐら | 作成日時:2023年12月25日 1時