羅の血は争えない【薬屋のひとりごと】 (ページ10)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:18,757 hit

１０話　言えないことページ10

.

猫猫が悶々と悩んでいる中、Aはニコニコと笑いながら話を続ける。

「まあ一回目も二回目も攫われた先が案外良くてね、人生なんとかなるなーって思ったよ」

「家族の事とかって、覚えてないの？」

猫猫は意を決して聞いてみた。
一方小蘭は簪について聞いた時よりも真剣な顔をしてAに話しかける猫猫に「猫猫もAと友達になりたいんだなー」と呑気に考えていた。

家族、と小さく呟いたAに猫猫は生唾を飲み込む。

「あ、そういえば」

何かを思い出したかのように手をポンと叩いたAに猫猫の鼓動は速くなる。

「私、確か妹がいたの。

猫猫はなんだかその子に似てるわ」

そう言って猫猫に笑いかける彼女は、昔行方知れずになった実の姉にとてもよく似ていた。

いや、似ていたというか、きっと、憶測で物事を言ってはいけないと散々おやじに言われているが、きっと、実の姉なのだろうと猫猫は確信していた。

左手の小指が歪なこと。十二年前人攫いに遭って行方知れずになったこと。

そして、どことなく、雰囲気がおやじに似ていること。

これがきっと、猫猫を陥れるための罠でもなければ、Aは確実に猫猫の双子の姉だろう。

「まあ顔もうろ覚えだし、名前ももう覚えてないんだけどね」

眉を下げて笑うAに、猫猫は一言「そうなんだ」とだけ返した。

憶測で物事を言ってはならないとおやじに言われている猫猫は、何の物的証拠も無くAを姉だとは言えなかったのだ。

.