９話 偶然は二つ以上重ならない ページ9
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「そういえば、噂って何？」
鼓動を落ち着かせて、先程疑問に思ったことを聞いてみる。やはり噂されるほど何かをした覚えもない。
「私がAに猫猫のこと話してたの」
「そう。小蘭が楽しそうに猫猫の話するからどんな子なのかなーって気になっててずっと会ってみたかったんだ」
「そういうこと」
何かあらぬ噂がされていたのかと身構えていたが、そうではないようだ。
「あ、ちょっとまってて」
Aは洗っていた衣服を絞ると、洗濯物を干している下女に渡しに行った。そのまま干すのを手伝っている姿を見ていると、小蘭が話し始めた。
「Aね、人攫いに遭ってここ来たんだってー」
「へえ」
まあよくある話だ。事実猫猫も人攫いに遭い後宮に来た。
「それで面白いのがね、人攫いに遭うの二回目なんだって！なんか十二年ぶりとか言ってた」
「、へえ」
十二年、その数字に落ち着いてきた心臓がまた鼓動を早くする。
「ここに来る前はでっかいお屋敷で働いてたんだって。ねー！！」
「え？なにが？」
洗濯から戻ってきたAが小蘭に尋ねる。
「Aがここに来る前の話！」
「ああ。そう、私人攫いに遭ってここ来たんだけどね。小さい頃…いくつだったかな、五歳くらいかな？のときに人攫いに遭ってるから人生二度目なんだよね。すごくない？」
「…Aはいまいくつなの？」
「十七！」
「……私と同じだ」
「えそうなの！？奇遇だねー」
十二年前、十七歳、人攫いが二回目。
偶然は二つ以上重ならないと何処かで聞いた。しかし、確証を得るものは何も無かった。
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作者名：7瀬 | 作成日時：2023年11月7日 22時
