6話 追憶 ページ6
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「(なんてこともあったなあ)」
Aは広い桶に入った大量の洗濯物をじゃぶじゃぶと洗いながら、1カ月前までの日々を思い出していた。
1カ月前Aを襲ったのは人攫いだった。
攫われた先は後宮という、皇帝とその親族を除いた男子が一切の立ち入りを禁じられた女の園のこと。つまり皇帝のお妃様たちが暮らす場であった。
「A〜!おわった〜?」
「もーすこし」
「まってようか?」
「先に行ってて。すぐ行くから」
「わかった!」
じゃあねーと籠を持ち去っていく下女仲間に手を振ってから、またじゃぶじゃぶと洗濯物を洗う。
攫われてよかったことと言えば、年の近い下女仲間ができたことくらいだろう。前はだいぶ年上の人かだいぶ下の人しかいなかった。年が一番近かったのは、2つ下の
が、後宮で働き始めてからというもの周りには同じような年の娘ばかりいるものだから、Aは内心大喜びだった。おつかいに行く度見かける楽しげな娘たちがうらやましかったのだ。
そして小蘭という明るくて少し幼い友人もでき、小蘭のおかげでいろんな娘とも友人になれた。
Aは心底後宮勤めを楽しんでいた。
そんなある日、Aは一つの噂を耳にする。
その噂とは、先日行われた園遊会にて、翡翠宮の侍女が毒をうまそうに食べたという奇妙なものだった。
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補足
Aが人攫いに遭い後宮に来たのはおしろい事件の後。
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作者名:7瀬 | 作成日時:2023年11月7日 22時