羅の血は争えない【薬屋のひとりごと】 (ページ4)

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４話　惚れたが負けページ4

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唐突だが、文明(ウェンミン)はAに惚れている。

しかし文明は高官の息子でありAは下女だ。当然周りからも大反対されるのは目に見えている。
だから文明はAを妻に迎えることはできない。

世間では評判の良い文明が下女を妻としたなら一気に評判が落ちてもおかしくないのだ。それは家の名に泥を塗る行為でもあると文明はわかっていた。

そして、Aもまたそれをわかっっている。
文明は自分に弱いということを。せめて下女としてそばに置いておきたいというわがままから、文明がAを辞めさせられないということを。

「今日はお誕生日ですよ。暗い顔なさらないでください。」

優しい笑顔を心がけて文明を見ると、文明はほほを少し赤らめて顔を逸らした。
そう、それでいい。そのまま惚れていてくれればいい。

そうすればAは一生職に困らずここで暮らしていける。

ここに来る前の記憶はおぼろげで、帰る家も家族ももうあまり覚えていない。
Aには身寄りがない。頼れるのはここしかない。故に、利用できるものは利用する。

いくら"おつかい"の伝手を使ったとしても、一生それで暮らしていけるかと言われたらその確証はない。
今のままが一番安全で、安泰で、安心なのだ。

「では、買い出しに行ってまいりますね」

顔を逸らしている文明に一礼して、Aは本邸を横切り屋敷を出た。

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