羅の血は争えない【薬屋のひとりごと】 (ページ1)

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１話　はじまりページ1

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「A！！早く起きな！！！」

「ん…」

「今日は文明(ウェンミン)様の誕生日なんだ。寝坊は許さないよ！！」

「はい…」

周女士はそう言うとピシャンっと障子を閉め、どたどたと大きな足音を出しながら台所のほうへ行ってしまった。足音が遠のいたことを確認してから、ゆっくりと重い体を起こして、大きく伸びをする。

「…はあ」

ついでに小さなため息も吐いて、Aは起き上がり布団をたたみ始めた。

Aがこのお屋敷に買われてからもうかれこれ１２年は経っただろうか。１２年前、Aは人攫いに遭いこの屋敷に買われた。
最初のうちは何が何だかわからず戸惑い泣いてばかりだったが、泣いてもどうしようもないと分かってからは開き直りここに仕えることにした。

「よいしょ」

押入れに布団を押し込み、寝間着を着替える。これから待ち受ける労働に嫌気がさして、もう一度溜息を吐く。

今日誕生日を迎えられた文明様はこの屋敷の嫡子である。お顔立ちは母君に似て大層整っており、頭も大変良い。性格もさわやかで優しく人望もある。
その文明様が誕生日を迎えたとなると、客人が多くなることは分かるだろう。

それが嫌なのだ。

正直言って面倒くさいしやりたくない。でもやらなくて折檻されるのはもっと嫌だからやるしかない。

「………はあ」

本日三回目となる溜息を吐いて、部屋の障子を開けた。

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