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貴方.
「これから先、ザギトワ選手と戦うときもあると思いますが……勝つための秘策などはありますか?」
『秘策……?』
そんな、私が彼女に勝てるようなところなんてまだ一つもない。
これから考えていかなくちゃならないことを、今聞かれたって……
困りながらも「えっと」と何度か繰り返して考える。
『彼女に勝つためには……毎日がむしゃらにやるしかないです。ただでさえ勝てるところがないのに、私が練習を怠っていたらいつまでも勝てないと思うので』
「なるほど……もし彼女に勝つことができたら、堪えていた感情も溢れますよね」
それはつまり、私に泣くか笑うかどっちかの表情を見せろと……?
彼らの一言一言が気になる。
何も堪えていたわけじゃないし、泣かないように気を付けるなんて無理だ。
泣きたいときは泣かなきゃダメだし、その逆も然り。
「氷川選手はポーカーフェイスなのが魅力の一つだと思いますが……他の選手と並ぶとそれがまた一際目立ちますよね。そのことを誰かに言われたりはしませんか?」
『えっ……と、』
「笑わないように、泣かないように、気を付けていることはありますか?」
『そんな、特には、』
よく分からないことを聞かれ続けて、パニック状態に陥る。
私って、無表情だからダメなの?
泣かなきゃ、笑わなきゃ……いけないの?
それだけで、周りの人たちよりも劣ってしまうの?
笑えば、泣けば……誰からも好かれる?
はあ、と息が溢れて、苦しくなって、また息を吸おうとしたのに、全く酸素が回ってこない。
少しずつ崩れ落ちていく重い身体に、記者の人の顔が歪んでいく。
『ごめん、なさい……ごめんなさい、』
「……A!!すみませんっ、ちょっとどいて、!」
「A!大丈夫か?!」
一希と先生の声が聞こえて、私は初めてマスコミの前で涙を流した。
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あお - 26話、「好きやねんやろ」よりも、「好きなんやろ」のほうがよいと思います。途中までしか読んでいないので、楽しんで続きを読ませていただきます (2019年1月5日 20時) (レス) id: 9b31bd131c (このIDを非表示/違反報告)
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