事実と現実と ページ5
昔、くたびれた老軍医が言っていた。
人間はレム睡眠とノンレム睡眠の2つを繰り返している、と。
ノンレム睡眠は眠りが深く、レム睡眠は眠りが浅い。
よって、レム睡眠の時には夢を見ることが多い、と。
眠れたかどうかも分からないまま目を覚ました深澤は、天井をぼんやり見つめながらそれを思い返していた。
今まで見続けてきた夢も、そういう時に出てきたのだろう。全く厄介なものだ。
でも、あいつは倒した。恐らく予知夢の類だっただろうあの夢は、もう見なくて済む。
「…………」
しかし、予知夢だと気づけたなら、対処ができたはずで。
脅えながら現実が来るのを待っていただけの俺は、なんだったのだろうか。
誰も襲撃されることを知らなかった。
俺だけが、その可能性があることを知っていた。
結果、夢と同じことになった。
ーーこの夢は、誰にも話していない。
少し落ち着いた今なら、言えるだろうか。
「失礼しや〜す……ってふっか起きてんじゃん。おはよぉ」
「……おはよ。あの、さ」
「…………夢」
「そう。夢」
「最初は、俺もただの悪い夢だと思ってた。でも、胸騒ぎがしてさ」
「それなら言えばよかったのに」
「確証もないのにどうやって言えっていうんだよ。……それにさ、夢の中のお前たちだって、ボロボロで、血だらけだった」
「……信じたくなかったし、そうなって欲しくなかったし、なにより見たくなくて。だから、黙ってたんだよ」
ちらほら包帯を巻いたままの者もいる中、リビングまで連れて行ってもらって、夢のことを話した。
もう終わった話だからか、反応は控えめだった。
ただ1人を除いて。
「ねぇふっかさん?その人の顔見てへん?」
「え、顔?」
ぐい、と距離を詰めてきた向井にたじろぎながら、朧気な記憶から顔の情報を引っ張ってくる。
それを聞いた向井は更に考え込み、やがて立ち上がった。
「思い出したぁ!」
「え、まじで?」
「本当に!?」
「何思い出したんだよ!」
半ば掴みかかるようにして聞きに来た皆の顔を1周見回して、向井は告げた。
「あんな、俺、ふっかさんが殺した相手と戦ったことあるんよ」
「……は?」
「あいつ、ほんま適当にその辺の奴に喧嘩ふっかけとって、その中には俺の友達もおった。それが許せなくて1人であいつのとこに乗り込んだんや」
「なんでそんな危ないこと……」
心配そうに彼を見たら、目が合った。
その目は、橙色に光っていた。
「俺も、能力者やったんや」
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作者名:麗華 | 作成日時:2020年6月11日 2時