人間らしく ページ43
気が付くと、暗い、とても暗いところにいた。広さも感じなければ、音も一切しない。もしかして、地獄っていうのはこんな場所なのかもしれない。
そう思い始めた時、ぼうっと青白い光が目の前に現れて、甲高い声でこう言った。
『ほほう、こりゃまた随分と厄介なものを持って来やがったな！』
古くさい生意気口調はエドそっくり。この念獣の姿は想像に任せるが、まぁこれだけは言える。不細工だ。
「君がエドの念獣？」
そう聞くと、念獣の大きな瞳がキラリと光る。光っても不細工である。
『いかにも』
ウムと頷くそいつに、私はさらに聞いた。
「私にかかってる念、除念できるの？」
『できるな。しかしタダではやらん』
本当にエドそっくりだ。念獣って本人とは別の生物として確立してると聞いたことがあるけど、無意識に似ることもあるのか？
「何を出せばいい？」
『まぁ落ち着けよ。俺のこと何にも知らねぇで代償を払うのはお前の方にも不安が残るだろう。良い取り引きは信頼から生まれる。
だからまぁ、何故こうなったのかくらいは教えてやる。いいか？しっかり聞かねぇとはっ倒すからな』
よく喋る念獣だな。不細工のくせに。
「女の子にはっ倒すとか言っちゃいけないのよ」
『うるせー！聞きたくねぇのか！』
しかも面倒なタイプだ。
「ごめんごめん。聞かせてください」
どうせ長くなるのでよっこらせ、と念獣の目を見つめたままその場に腰を下ろす。相手が不細工だろうと油断してはいけない。
『お前若いのに“よっこらせ”はねーだろ……まぁいい。
俺の名前はエルガー。他人の念能力を消せる、いわゆる除念の力を持っている。が、それ以外は持っていない。だから貰うのだ』
経緯が省かれ過ぎていて納得しずらいが、きっとその言葉だけが真実なのだ。
『初めは欲望を手に入れた。そして次は声、頭脳、肉体…とまぁそんなわけだ。お前から貰うものは俺が決める。一応お前にも拒否権はあるが、3度以上断ればお前は死ぬ。俺から目を逸らしてもここから一生戻れなくなるから気を付けろ。何か質問はあるか？』
そんな重要なことをあっさりと、カラオケのカウンターのバイトみたいな調子で言うなよ……
「そうやって君、ゆくゆくは何になるのが目的で？」
『神だ』
即答したエルガーに、吹き出しそうになったのを必死で堪える。馬鹿にしてるわけじゃない。…いや馬鹿にしてるんだが、顔がマジで最高に不細工。私はこんな神やだな。
「なるほど。で、何をご所望なの？」
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作者名：ナツメ | 作成日時：2018年11月19日 18時
