私らしく ページ44
『そうだな…お前みたいな若い娘が持ってそうな特別なものがいいな。……恋心なんてどうだ?』
アカン今度こそは堪えきれない!
「フッwwwwwフフッ、…フヒヒッwwwいやwwごめんwww失礼wwwwトイレを貸して貰えるかなwww」
顔が逸らせないのがこんなに辛いとは!!中々やるじゃないか不細工のくせに!
『トイレなんかねぇわ!それ以上無駄口叩くとお前マジ呪い殺すぞ』
「あははっ、ごめんって。あー、しんど」
一通り笑い終えた後、不機嫌そうなエルガーが妙に可愛らしく見えてしまってまた笑いそうになった。
「ごめんねエルガー。どうしても恋心は無理だ。あげようにも、私はそれを持っていないからね」
そうだ。手元には、もう無い。
別に余計なお世話かもしれないが可哀想なので一応説明してあげると、エルガーは鋭い目付きのまま、ふよふよと空中浮遊する。
『…ッチ、まぁ確かにお前の心には大抵醜さが潜んでいるからな。もっと良質なのにするのが賢明だな』
なんて生意気な奴だ……!もう何もあげないぞ!と言いたいところだが、交換条件だ。差し出さないわけにはいかないし、今一度断ったからあと断れるのは一回。
「じゃあ、何にする?」
『…プライドだ。お前のその誰よりも高いプライドが欲しい。そうすれば俺はより強くなれるだろう』
こいつは何でそう嫌なところばかり突いてくるのかね……かつて指圧マッサージのプロからテクニックでも奪ったりしたのか?
「残念だけど、それも無理」
私はやはり、エルガーの目をしっかり捉えて言った。
『……何故だ。次断ればお前は死ぬんだぞ?俺がもし次にデカい要求をすればお前は…』
ふいに見えた、瞳の中に眠ってる優しさ。そうか、彼は既に誰かから優しさを貰っているのか。そっか。
「エルガー、人間はプライドを捨てちゃいけないんだ。それを捨てたら死んだと同じだ。だから、私は次に懸ける」
これは、私の勇気の第一歩だ。誰かの優しさを信じてみるという、私にとって大きな一歩。
エルガーはしばらく黙ってから一言、呟いた。
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作者名:ナツメ | 作成日時:2018年11月19日 18時