第24話 我儘で愛しい弟 ページ26
「姉ちゃん!オレ!見えるようになった!」
「なってないわよ、ほらさっさと帰んなさい」
「じゃあ姉ちゃん守れない!」
「はいはい、姉ちゃん強いから平気よ」
このままだとごねるだろうか。
泣き喚いてしまうかもしれない。
今回は後者だったらしい。まだ泣いてはいないものの目には沢山の涙を貯めている。
「やぁぁだぁぁぁ!!!」
「見えないものは仕方が無いでしょう?ほら、さっさとお家帰んなさい」
「やだぁぁ!!姉ちゃんと一緒がいい!!」
「駄目よ、帰りなさい。姉ちゃん寮に戻らないと」
「やだやだやだ!俺絶対帰らない!!!」
「我儘言わないで?お姉ちゃんも忙しいの」
「なんで!?じゃあ何時帰ってくんの!!」
耳が痛い言葉だった。
入学して約三ヶ月、私は一度も家に足を運んでいない。夏油も硝子も、あの五条ですら一度は家に帰っているが私は帰らず学校で過ごしている。
「…あ〜、ごめんね。今度帰るから」
「今度っていつ!ねぇ!!いつ!」
傑の胸から飛び出しぽかぽかと私の膝を叩きながら暴れる真琴の頭を撫でてやると擦り寄って私を見上げた。
「連れて帰りゃいいだろ」
「は?」
「うん、一日だけならいいんじゃない?」
「え、ちょ」
「怖い思いをしたのに可哀想だろう?」
五条までもが真琴に加勢している。うるさかったのか面倒くさかったのかもしれないが。いつの間にやら真琴の隣にしゃがんでいた傑が真琴の頭を撫でる。
「…真琴」
スカートを掴んでいる真琴の両手を離し、真琴の手を握ったまましゃがみこむ。
「姉ちゃんの傍に居る?」
「…うん」
「大人しくいい子に出来る?」
「…うん」
「…じゃあ、約束ね」
頭を撫でてやればやったぁ!と輝かしい笑顔で笑う真琴を一度抱きしめて抱き上げた。
この子はもうこんなにも重くなったのかと少し感動した。
「姉ちゃん姉ちゃん、俺姉ちゃんのご飯食べたい!」
「ん?いいよ」
「お前料理なんて出来んの?」
「当たり前でしょう?寮は自炊じゃない」
五条は兎も角夏油までもが口を開いて驚いている。不満が溜まりそうだ。
「姉ちゃん!姉ちゃん!寮!行きたい!」
「はいはい。分かったから」
今日の献立は何にしようか。
そんな事を考え真琴を抱き上げた両腕に少し力を入れた。
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卯月@スイ(プロフ) - ナッツさん» コメントありがとうございます!!がんばりますね! (2021年1月20日 7時) (レス) id: 6ffd6a43ea (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - ニヤニヤしながら見てしまいました(^^)更新楽しみにしていますっ! (2021年1月19日 22時) (レス) id: 528660073f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卯月@スイ | 作者ホームページ:http://weareasas
作成日時:2021年1月14日 15時