46話 ページ48
酷く生臭くて、強い鉄の匂い。日常を平和に過ごしているだけでは絶対に味わうことのない刺激臭。当時の私は、銃声が聞こえなくなってしばらくしてから様子を見に行ったが、まだ純粋だった私には、すぐには理解の追い付かない光景だった。
服が赤黒く染まる程出血しているのに、傷口からはさらにドロドロと溢れてくるそれ。気にしていない様子で項垂れている父親の頭を掴み、母親と対峙している敵。そしてそんな状況にも関わらず一言も、唸り声さえあげない父親。その光景だけで、父親が息絶えていることは明白だった。
そればかりか、出てくるにはタイミングが悪すぎた。もっと速くに行くか遅くに行くかだったらよかったのに、よりにもよって、と言わんばかりの最悪さ。
父親は既に手遅れで、回復魔法も意味を成さないのに、出てきたことで母親は少女を庇う他無くなってしまった。
"もっと速ければ父を救えたし、もっと遅ければ母は勝っていただろう"ということが客観的に見たことで今わかってしまい、少女は絶望に似たそれを感じざるを得なかった。
(直接ではないにしろ、自分が殺したような物じゃない。)
感じるのは悔しさと少しの苦々しさ。当時とは違う絶望は、再上演されたことでフラッシュバックしたトラウマと併せて、まるで鈍器で殴られたかのような衝撃を彼女の心に与えた。
不意に肩を軽く叩かれ、現実に引き戻される。先程のぬいぐるみに｢まだ、終わってないよ｣と囁かれ、それに頷いて前を向いた。
幼いAを庇うように抱き締めひたすら蹴られている母だったが、頭を強く殴られて体が傾いた。父と同じように頭を掴まれて少女から離れていく。
敵が怯えた様子の少女にも同様に手を伸ばす。しかし、それは眼前にして火花のような物を散らし弾かれた。ﾁｯ、と舌打ちをして、まぁいい、と吐き捨てた。
｢どうせガキはまだ魔法が使えないんだ、ほっとけ。その状態じゃ殺すことも出来ねぇ。下賎な道具にしか成らない化け物の分際で…。｣
そういって、2人をつれていく。残されたのは、血溜まりと、ボロボロになった少女。観客だったAは、その光景を無視して奴等を追い掛けた。
少しでもその姿を見ていたい一心で。そんな純粋な気持ちのおかげだったのかもしれない。小さな声で呟かれた
｢…私が生きている間だけ、でも…。少しでも、あの子を、……Aを、守らなきゃ……｣
そこで、映像は途切れた。
最後に見えた、ぬいぐるみのにこやかな顔。
？｢ またね。 ｣
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おとーふくん(プロフ) - え、好きです(唐突)Twitterでフォローさせていただいているそれんさん(蒼空)です！めちゃくちゃ冒頭の始まり方が好きです...のんびり待ってるので更新頑張ってください！！ (2021年3月20日 10時) (
レス) id: a466b348e0 (このIDを非表示/違反報告)
御影みかん(プロフ) - ゆーちゃさん» こんにちは！コメントありがとうございます！とっっても嬉しいです！！参考になれるような文をかけている事に少し驚きを隠せません笑、まだ書いた経験が少ないのでまだまだ拙い文ではありますが、これからも読んで貰えると嬉しいです！ (2020年6月15日 16時) (レス) id: acabe9bdaf (このIDを非表示/違反報告)
ゆーちゃ(プロフ) - こんにちは！作品見てくださってありがとうございます！この御影みかんさんの語彙力ヤバいですね！参考にさせて頂きます。そして内容。内容も良いですね。課題等頑張ってください。更新待ってます！ (2020年6月15日 9時) (レス) id: 386be5268c (このIDを非表示/違反報告)
御影みかん(プロフ) - あかつきさん» あああありがとうございます！私もあかつきさんのお話はとてもストーリー性や話の運び方が上手ですしとても楽しく拝見させていただいてます！面白いと言っていただけて嬉しいです、頑張ります！！ (2020年2月16日 23時) (レス) id: 3f9567dc9d (このIDを非表示/違反報告)
あかつき(プロフ) - コメ失礼します！！作品お気に入り登録してくれたって通知が来たのでちょっと気になって作品読まさせていただきました…！表現の仕方とても勉強になりますし内容も面白いのでこれからも見させて貰いますね！！ (2020年2月12日 23時) (レス) id: f6ec135c67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：御影みかん | 作成日時：2020年1月24日 7時
