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「 シルシ 」 ページ9










「ん…」





深夜、目が覚めると目の前に広がるのは逞しいカラダ。

昨夜のことを思い出して顔が火照るものの、その体から目が離せない。








「(かっこいいなあ…)」








カラダは程よく鍛えられていて、しかしながらスヤスヤと眠る寝顔はあどけなくて、昨夜、俺を求める色っぽい表情とは打って変わった、子供みたいな寝顔にクスリと笑ってしまう。


そんな中ふと思ったこと。その逞しい胸にこっそり指を這わす。








「(…おれも、キスマ、付けてみたい)」








自分の胸元に目を落とすと、いくつかに散らばる赤い印。

ダメだとわかってはいるものの、脱ぐ仕事、直近でないし。そう思って許してしまったらもう最後、嬉々として印をつけるのはいつもの決まり。

けど、俺、しげにつけたことない。今更気づいたそんなこと。

だいいちだれにもつけたことないから、付け方が分からへん。けど、しげがいつも俺に付ける時は、チュッと吸っているような、気がする。




寝てるし、大丈夫やろ。静かに近寄って、胸元あたり、服で隠れそうなところに1度ちゅ、と口付けをする。








「(よし、やったろ)」









起きてないことを確認して、しげの見よう見まねで、チュッと吸ってみる。

…と、何も起きない。ただ少し赤くなったけど、それもすぐなくなった。



まってや、アイツ、どうやって付けてんの…?もっと吸わなあかんの?え?ムズすぎひん?


頭の中は混乱してる。キスマなんて、すぐ付けれると思ってたのに。

やって、アイツ、何個も何個もすぐ付けてくるねんもん。まさかこんなに難しいやなんて…


何回もやってたら、起きてまうかもやし。けどやっぱり難しくて、何度も失敗する。






ええい、もうええわ!思い切り、吸ったれ!



そう思って最大限の力を振り絞ってチュッと吸うと、咲き誇った赤色の花。







「(やった!ついた!)」








ニコニコ、としながらそこに着けた印をまた指でなぞると、何たる優越感。
俺だって、つけたかった、俺のだって印。やっと付けれたんだ。








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作者名: | 作成日時:2023年3月9日 10時

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