【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました２【男主】

仲直り ページ41

｢おい、起きろ｣

｢あだっ｣

真澄に腰辺りを軽く蹴られ、俺は夢から現実へと連れ戻される。

｢え、Aさん！？｣

｢Aもヘンタイネ｣

｢だから大変ですってシトロンさん……おはよう咲也｣

変わらず眠い目を擦りながら、シトロンさんと咲也にとりあえず挨拶。すぐに咲也から返事が返ってきて、癒しの力で少しだけ目が覚めた。

何とか起き上がって胡座をかく俺の元に、咲也が近付いてくる。

｢Aさん！昨日はお礼も言わずにすみませんでした……凄く嬉しかったです。ずっと傍に居てくれて｣

手まで握って貰っちゃって。

言いながら俺の手に視線を落とす咲也。
くそ、もしこいつが女だったらとっくの昔に攻略してるというのに……！

邪念を振り払いながら、その顔色を確認する。確認の為にもう一度頬に手を当てたが、もう大丈夫そうだ。

｢昨日はよく寝れた？｣

｢はい！ぐっすり寝れました！｣

｢ん、良かった。昨日の事なら俺も寝たし気にしなくていいぞ。手については、この間のお返しって事で｣

前に舞台で寝落ちした時、咲也が手握ってくれたの、なんだかんだで嬉しかったしな。

笑いながらその手をとると、たちまち向こうも笑顔になった。

｢それと、咲也と話したい奴がそこにもいるみたいだぞ｣

｢え？｣

俺が指さした先には、めんどくさそうにため息を吐く真澄が。
多分こういう事には慣れてないんだろう。どうすればいいのか悩む様子が伺える。

｢真澄。素直になるヨ｣

｢……押すな｣

シトロンさんの後押しもあり、咲也と真澄が向かい合う。シトロンさんこういう時はしっかりしてるし、居てくれて本当良かった。

｢真澄くん？｣

｢……悪かった｣

長い長いタメの後、ボソリと呟く真澄。
聞こえたか心配だったけど、嬉しそうな咲也を見てそれは杞憂に変わった。

｢……俺こそごめん。真澄くんの足引っ張らないよう俺、頑張るから｣

｢当たり前｣

いつもみたくぶすっとしているけど、心做しか真澄の表情は柔らかくて。

｢動き、教えてやる｣

｢……！うん！｣

そのまま歩き出す真澄の後を追うようにして、二人はレッスン室の中央まで向かっていった。

｢これにて一件チャプチャプネ｣

｢落着です｣

まさかこんな所で名言が飛び出すとは。

(なんにせよ、良かった)

俺が勝手な行動を取ったのもあって不安だったけど、上手い具合に収まってくれて。

｢A、お疲れ様ダヨ｣

優しく笑うシトロンさんに頭を撫でられるのは、これが初めてだった。

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