【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました２【男主】

便利屋開始 ページ31

一成からサイトが完成したという連絡が入ったのは、その日の夜稽古の時だった。

｢わぁ！すごくかっこいい！｣

｢いいですね！｣

一成のサイトは色鮮やかで皆からの評価もよくて、一気に場の賑やかさが増す。

｢前のサイトから二十年時が進んだね｣

さらりと毒を吐く至さん。ちなみに支配人は未だ帰らず。

(まぁ俺としてもそんな期待してないし、時間かけてくれた方がーーー)

｢Aさん出来ましたよ！｣

……マジか。

早速どんなもんか気になって、皆の痛い視線を背中に感じながらも支配人の隣に立つ。

｢……ぶはっ｣

こみ上げてきたのは、一成の時の感動とは程遠いレベルのクオリティに対する笑いだった。

ボーダーとストライプという最悪な組み合わせで作られた背景に、何故か筆フォントで書かれた｢便利屋｣の力強い文字。何だこのセンス酷すぎて笑える。

｢ど、どうした支配人……っ｣

｢私の自信作です！｣

｢自信作……ひぃっ｣

腹を抱えて笑う俺に、皆も流石に気になったのか凄い勢いで傑作を覗き見る。次いで全員がなんだこれとでも言いたげな目をしていた。

｢これは酷い｣

｢ある意味目立ってるけどな……｣

皆の気持ちは分かるけど便利屋の文字のインパクト強すぎて。
あれだ。その時は面白くて大爆笑したんだけど後になって何が面白かったのか本気で分からないやつ。今まさにそれ。

｢いや笑った笑った……ありがとうございます支配人。これそのまま使わせて貰いますね｣

何となく気に入ったからもうこれで行こ。
お礼を言うと、照れる支配人とは反対に焦った顔の監督さん。

｢Aくんほんとにこんなので行く気！？｣

｢はい。せっかく作って貰いましたし。これはこれで行ける気がします｣

グッといい笑顔で親指を立てる俺に、もはや皆呆れて声も出ないようだった。
いや分かんないぞ？こういう一見ふざけたやつ程、猫の手も借りたいレベルの人が来たりするし。

実際来なかったら来なかったで平和な街なんだねって事で。

｢もし一ヶ月以内に一件でも仕事来たら、俺の人生とも言えるデータ譲ってやってもいいよ｣

｢えぇ、なんですかその微妙に行けそうで行けなさそうな条件｣

というかゲームデータって至さんの人生その物じゃないか。とは言ってもこの仕上がりじゃ当分の間このサイトも暇になりそうだし、至さんの勝ちは目に見えてるけどな。

｢おう。なんか盛り上がってんな｣

｢げ｣

背後から覚えのある声が聞こえ、俺の身体は瞬時に凍りついた。

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