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部屋の一部が、崩落した。
「狼、これは一体、なにが起こったんだ?」
舞い上げる炎を見上げながら、身を伏せたまま、狼に聞いてみた。
「さあな。俺にも分からねぇ。ただ、お前が飛び出した後だったからな。もしかしたら、お前以外の収容所全員を、殺そうとしたんじゃないか。」
「仮にそうだとして、どうして僕以外を殺そうとしたんだ?」
そう問いかけても、狼にも僕にも分からないことは、どうしようもない。
今は、できることをすべき状況になっている。ここで何かを言い争ったところで、いい結果が生み出せるとは、正直、微塵も思っていない。
「とりあえず、ここから出るぞ。逃げることが最優先だ。」
僕に覆いかぶさっていた狼は、立ち上がり、窓を開ける。風が勢いよく部屋の中に入ったため、たちまち火の渦は、燃え盛る。
「行くぞ、A。」
「待って、会長は、どうなった?」
窓枠に足をかけた狼にそう問いかけると、狼は一瞬、動きを止めた。
目を伏せたかと思えば、僕の腕を掴み、引き寄せ、僕を担いだまま、窓の外へと降りた。
「俺が、会長室へ着いた時には、会長は、すでに、死んでいた。」
心臓が止まりそうだった。数分前まで、普通に話していた人間が、いきなりいなくなると、こういう感情が流れ出てくるものなのか。
なんだか、息苦しくて、生きるのが辛くなりそうなほど、精神を削られる。
「僕は、会長については、なにも言わないよ。今はただ、生き延びることで精一杯。」
「ああ、それでこそ、お前だな。」
狼は、そう言って口元に緩く弧を描き、僕の頭をそっと撫でた。
「狼、僕を子供扱いしてるのか?」
身長の高い狼を軽く睨みつけながら、僕はそう拗ねた。
子供扱いは、嫌いだ。
少しの和みモードもつかの間、すぐに次の爆弾が爆発した。
いつのまにか、収容所は、全壊寸前まで壊れていた。
所有者のいなくなった建物は、ただの空き家でしかない。
僕らは、名残を惜しまず、逃げる術を考えていた。
「狼、これからどうするつもりだ?」
炎に飲み込まれた街を見下ろしながら、隣に立つ狼に話しかけた。
「Aと一緒に行く。なにかとおっちょこちょいな部分あるだろ、お前。…心配なんだ。」
風に煽られた狼の髪が、寂しげになびく。
「僕の執事になりたいの?」
「んなわけあるか、バーカ。」
狼は、言いながら僕の額のデコピンを食らわせた。狼のデコピンは、かなり痛い。
「お前の側に居たいだけだ。」
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枯羽(プロフ) - ゆきさん» 良かったです!続編に行ったのでぜひ読んで見てください。リクエスト下さってありがとうございました!ゆきさんのおかげで、楽しく番外編を書くことができました。 (2018年3月19日 0時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 楽しめました!ありがとうございます笑更新楽しみに待ってます!リクエストに答えていただいて本当にありがとう (2018年3月18日 22時) (レス) id: 2de872441c (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» ど、どうだったでしょうか?恋愛系は、難しかったです…。うまく書けていないかもですが、楽しんでいただけたら、何よりです。 (2018年3月18日 22時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
一応歌い手の、みにまーむ(プロフ) - 枯羽さん» そうなんですね!楽しみにしています! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 69f1870dfa (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - 一応歌い手の、みにまーむさん» その謎は、続編にて解き明かそうと思います! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
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