１５話 ページ15
翌日の朝。食事を終え、片付けをしたあと、ソファで朝ドラを食い入るように見つめる三人の後ろから、憐歌の手がニュッと伸びた。リモコンをかっさらい、無情にも電源OFFボタンを押す。
「あーー！お姉ひどい！」
「……気になるところで…」
「チッ…おい、何のつもりだ」
声を揃えて抗議する三人を横目に、ベランダの方へ移動して、折り畳みの椅子を開いた。手元には灰皿。昨日はあまりにあんまりな状況でついついリビングのど真ん中でタバコを吸ってしまったが、本来はこうしてベランダに出るか換気扇の下か、自室でしか吸わないようにしているのだ。窓を開けて、ベランダに陣取る。
「悠長にテレビ見ている暇がある？…アンタらのこと、話してもらう」
流石に何も知らないまま置いてはおけない。ジロっと睨むと、三人が表情を固くした。
「……と言っても、どう話したらいいもんか…」
リヴァイが困ったように考え込む。タバコに火をつけた憐歌は、不意に今が五月で良かったなんて思った。気持ちのいい風が、憐歌を宥めるように吹いてくる。
「分からないことだらけなんだよね？そうしたら…まずは二人のことを教えて？趣味とか仕事とか、今までの日常生活の事とか」
琴音の問いかけは、社会科教師らしい助け舟だ。社会…特に歴史は、当時の人々の生活を知る事がまず基本になる。そこから文明や文化、思想などを裏付けしていくのだから。
「分かった。まず俺達の仕事は、兵士だ。調査兵団に所属している」
左手にタバコを挟み、右手に構えたスマホで憐歌がメモをし始めた。彼女なりの情報整理だ。
「調査兵団の仕事は主に、壁外調査になる。巨人どもと戦うことが一番多い兵団だ」
「…巨人ども、ねぇ」
「こっちに来てからは、見てねぇがな」
「当たり前だろ、巨人なんかいたら、今頃世界中が大パニックだ。インデペンデンスデイだ」
「お姉、それちょっと違う」
スマホに指を滑らせながら呟く憐歌と、それにツッコミを入れる琴音。彼女達が巨人という存在を信じていないのは、明らかだった。
(だがそれは、俺達の現実とは違う)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カイリ(プロフ) - 結衣さん» 私からも、お知らせありがとうございました。ご冥福をお祈りします (2017年8月30日 21時) (
レス) id: e91033920e (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 結衣さん» お知らせありがとうございます。お名前を外させていただきました。リル様のご冥福をお祈りします。 (2017年8月30日 9時) (レス) id: 0aa059a6b7 (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - リルは私の友達なのだけれど、この作品が出来た頃に交通事故で遠い空に旅立ったのだからこの小説のことはどうにもできません (2017年8月25日 0時) (レス) id: 12a171e478 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カイリ＆灯霧
x他2人 | 作成日時：2017年5月13日 22時
