43回 ページ9
私達人間は、恐怖の対象から無意識に逃げようとする。
その反応は、人間の本能だ。
それは、何としてでも生きろ、逃げろ、と私達を催促する。
気持ちが防衛本能に勝つ状況。
それは、非常に強い感情を抱いたときだ。
腹の底から湧き上がるような恐怖でさえ、覆してしまえる位、強烈な思い。
そう、例えば──
「あの、私、行きます。 挑戦させてください」
鬼に対する、酷い嫌悪感。
今は亡き人達に対する、深い悲しみ。
師範に下げていた頭を上げて、右を見れば、善逸くんは俯き、膝を抱えて座り込んでいた。
小さな子供が、自分の思い通りにならない時、拗ねるみたいに。
そのせいか、彼の背中はいつもより少し、小さく見えた。
──きっと、彼には鬼に対する憎しみを抱く動機がないのだろう。
私は、彼が無理をして、この試験を受ける必要は無いのではないかと考えた。
もし受かったとしても、原動力になるような物がなければ、鬼狩りという過酷な仕事は、続けていけない。
心が空っぽなのに、むやみに体を傷つけ続けたら、ついには彼自身が壊れてしまう。
「善逸くん」
私も片膝をついて、彼に声をかける。何か言わないといけない。
けれど、彼にかける相応しい言葉が見つからず、黙り込んでいると、
「──ごめん」
一言、そう呟いて、彼はどこかへ行ってしまった。
79人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠夏(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございませんでした。オリジナルフラグを外して、公開設定を下書きにしたつもりだったのですが、手違いで全体公開、オリジナルフラグが立ったままの状態になってしまっていました。不快な思いをさせてしまい、すみません。 (2019年9月23日 15時) (レス) id: fa645de6ca (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい。違反だという意識はないんですか? (2019年9月23日 14時) (レス) id: 1e7c2ecc39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑠夏 | 作成日時:2019年9月23日 14時