ライター。(赤) (ページ14)

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菜々に何にも告げられないまま、着いたのは大阪市の大きなショッピングモールだった。

「ここに来たかったの？」

菜々のことだから、太陽の塔とか海遊館とか

メジャーな場所に連れていってくれるのかと思ってたけど、

菜々「こういう、なんでもないところで遊ぶのが何気に楽しかったりするでしょ？」

菜々はそうにこっと笑って先にお店の中へと入っていく。

…菜々らしいな。

今日は菜々のプランで思いっきり楽しもう。

菜々「お店回って～、映画見て、ご飯食べて、のんびりしよ！デートしよ！」

菜々がわたしの手を取りぶんぶん回す。

20代も、もう後半の女ふたりが

何やってんだ、って傍から見たら思われてるのかもしれないけど

周りの目なんて気にならないくらいに楽しかった。

あんまり自己主張が激しくないわたしは

菜々のプランに振り回されっぱなしだったけど

おかげで、充実した有意義な時間を過ごせた。

「ありがとう、」

帰り際、聞こえるか聞こえないかくらいの声でそう呟くけど

菜々「んー？なんてー？」

近くを通った電車のせいで

菜々には聞こえなかったみたい。

…でもそれでいい。

きっとまだまだ、菜々には助けられ救われる。

ありがとうを言うにはまだ早すぎると思うの。