雨の降る日は【オリジナル】 (ページ7)

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何時もの場所でブランコを漕ぎながら歌を歌っていた。横には本を膝に置いて聞いている奴。日差しがジリジリと肌を焼き付くしても動かない。

光のしたで歌うのは本当に心地が良いからと、歌い続ける。
不思議と近所迷惑だとか、学校に苦情の電話が入る事は一切無かった。

「ねぇ」

歌を遮る小さな声に歌うのを止めて耳を傾ける

「ん？」

「最近さ、辛いんだよね。」

「おう？何かあった？」

「否、なんにもないよ。そう、なんにもないんだよ。」

そう言って本を抱えて帰ろうとする彼奴。その時に今まで一度もなかった怒りの感情が沸々と沸いてきた。

鈍感な俺じゃ相手の考えてる事なんて分からないし、言葉にしてくれないと分からない。何か言いたいことがあるなら言えばいい。

嫌いになったなら嫌いになったと
うざったいならうざったいと

「ね、ねぇ」

鞄を持って帰ろうとする奴に何も考えてないくせに声を掛けて仕舞った

「なに？」

「否、別に、なんか悩んでんなら聞くけど？」

自分の事なのか他人の事かそれだけでも聞いておきたかった。
もし、自分の事なら色々考えなくちゃいけない。
だから、それだけでも。

御互いの距離は遠く、未だ今日も何処かで雨が降っている。
それは外で降っているものか、心の中で降っているものかなんて分からない。

心の雨に気付ける人になりたいとこの時は本気でそう思っていた。

風が吹く。穏やかな風が髪の間を通り過ぎて行く。

「いいの？」

少し時間がたってからの言葉。
自分の私利私欲の為に誰かの悩みを聞くだなんて最低だ。

「勿論」

「それじゃ御言葉に甘えて」

奴は自分の鞄をベンチに置き直し、そっとブランコに戻った。日は、傾きかけていた。