#13 ページ13
「…本当は、一度でいいから本気で愛してほしかった」
ついに、山田の目から涙が零れた。
サッとハンカチを差し出す。
「こう見えて、女子力高いんだよ、俺。」
山田の「ありがとうございます」と同時に、コーヒーが運ばれた。
「お待たせしました、コーヒーです…」
「あっ…、すいません、大丈夫ですから」
ちょっと、俺が泣かせたみたいになってねぇかな。
店員さんが控えめな笑顔でカウンターに消えると、山田は笑った。
「…ははっ、伊野尾さんに泣かされたみたいになってる」
「頼むよ、まじで勘弁」
2人でコーヒーを飲み、山田が話し始めた。
「…もしかしたら、俺も…もう、社長を好きな気持なんて無かったのかも。」
「え?どういうこと?」
あんなにラブラブしてたくせに。
こっちは見るのも辛かったんだぞ。
「自分でもびっくりするぐらい、冷静なんですよね。そこまでショックを受けてないというか。おめでとうって気持ちも大きいんです」
山田自身も、こうなることを分かっていたのかもしれない。
だからこそ、薮の幸せを奪っちゃいけないと前々から思ってたのかな。
「…さっき、ちょっとだけ泣いたら、スッキリしました」
「そう…?ならいいけど」
「それに、最近気になってるっていうか…思わず姿を探してしまう人がいて…」
「えぇっ?!」
え、薮の他に…?
おいおい、嘘だろ…。
この一件で山田は俺のものになると思ってたのに。
新たなライバル出現ですか。
「えっと…ちなみに、誰っていうのは…」
「まだ、ひ、秘密です!…そのうち、言います」
うわ、一難去ってまた一難か。
山田から告白されたら誰だって受け入れちゃうよ…?
相当ピンチじゃね?俺。
「い、伊野尾さんは、恋人いないですよね?作らないんですか?」
「……好きな人はいるけど、…ピンチだからなぁ」
「好きな人、いるんですね…」
ほんの数秒、哀しげな顔をしたけど、それが何を意味しているかは分からなかった。
「そろそろ、戻ります?…これ、サボりですよねっ」
「あー、確かに。でも、薮社長公認だからいいんじゃない?」
ははっと笑って、結局お会計をした。
会社に戻ると、お祝いムード一色で俺たちのことなんか誰も気付いてなかった。
山田は、笑っていた。
「おめでとうございます」
誰かに聞こえるか聞こえないくらいの、小さな声で、祝福していた。
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るぅ。(プロフ) - コメント失礼します!本編を読みたいのですが、作者ページを見ても出てきませんでした。R18は他の作品で閲覧しているのですが、作品名を教えて頂けませんか? (2017年9月15日 4時) (レス) id: 8a862d5fb2 (このIDを非表示/違反報告)
子猫丸(プロフ) - ぽっぷこーんさん» わかりました。ありがとうございます (2017年7月16日 8時) (レス) id: d59f6a9eff (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぷこーん(プロフ) - 子猫丸さん» おそらくR18作品は閲覧出来ないのではないでしょうか??そうだとすれば、私も閲覧を促すようなことは言えないです(;^_^ (2017年7月16日 8時) (レス) id: f1fc94d5f0 (このIDを非表示/違反報告)
子猫丸(プロフ) - ぽっぷこーんさん» 調べても出てこないんですがどうしたらいいでしょうか (2017年7月15日 22時) (レス) id: d59f6a9eff (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぷこーん(プロフ) - 子猫丸さん» そうです!! (2017年7月15日 22時) (レス) id: f1fc94d5f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽっぷこーん | 作成日時:2017年4月23日 16時