#12 ページ12
午後2時、悪い予感が確信に変わり始めた。
「おい、今、社長の奥さんがロビーにいるんだって」
「え？なんで？」
「詳しくは分かんねぇけど、妊娠したとかしてないとか…」
社長の奥さんが妊娠。
それ、相当マズい状況なんじゃ…。
…山田は？
ガタッと音を立てて、席を立ち、ロビーへ向かった。
.
ロビーのベンチに仲良く腰掛けていたのは、薮と奥さんだった。
山田は1mほど離れたベンチの側に立って外を見ている。
耳を集中させると、一ヶ月とかなんとかって聞こえた。
「お父さんの生まれ変わりなのかしら」
「そうかも」
「先生が言うには、9週目らしいから、この間の北海道の時じゃないかな」
「あぁ、あの時か…」
ちょっと待て。
この間の北海道のって、俺が山田と過ごしたあの日だよな。
山田はあんなに薮を想って苦しんでたのに、そっちは仲良くやってたってわけか。
「…薮、山田借りるぞ。山田、一緒に来て」
一言伝え、山田の手を引いて会社を出る。
とにかく、少しでも会社から離れたくてオシャレなカフェが建ち並ぶ大きな通りまで来た。
「ちょ、ちょっと、伊野尾さんっ、痛いです…」
痛い、と言われてようやく我に返る。
「…あぁ、ごめん」
「ここ、入ります…？」
店内にはランプが溢れていて、なんとも異国風なカフェに入った。
とりあえず2人でコーヒーを頼む。
「…伊野尾さん、心配してくれてるんですよね。俺、大丈夫ですよ、ありがとうございます」
「大丈夫って…」
絶対大丈夫じゃないし。無理して笑ってるし。
「…いつかは、こんなときが来るんだろうと思ってました。所詮、俺は男だし子供を産める訳でも無いですし」
「でも、」
「いいんです、俺は充分なほど幸せにしてもらったし、楽しかったですから…」
涙を堪えているのか、声が震えている。
「薮とは話したの？」
「いえ。でも、こんな状況でフラれないわけがないじゃないですか。それに…」
「それに？」
「結局は俺のことなんか好きじゃなかったんですよ。一度も、“愛してる”って言ってくれなかったんです。」
薮なりに、どこかでけじめを付けたかったのかな。
関係を終わらせるべきだって気付いてたんだ。
「…本当は、一度でいいから本気で愛してほしかった」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るぅ。(プロフ) - コメント失礼します！本編を読みたいのですが、作者ページを見ても出てきませんでした。R18は他の作品で閲覧しているのですが、作品名を教えて頂けませんか？ (2017年9月15日 4時) (
レス) id: 8a862d5fb2 (このIDを非表示/違反報告)
子猫丸(プロフ) - ぽっぷこーんさん» わかりました。ありがとうございます (2017年7月16日 8時) (レス) id: d59f6a9eff (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぷこーん(プロフ) - 子猫丸さん» おそらくR18作品は閲覧出来ないのではないでしょうか??そうだとすれば、私も閲覧を促すようなことは言えないです(;^_^ (2017年7月16日 8時) (レス) id: f1fc94d5f0 (このIDを非表示/違反報告)
子猫丸(プロフ) - ぽっぷこーんさん» 調べても出てこないんですがどうしたらいいでしょうか (2017年7月15日 22時) (レス) id: d59f6a9eff (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぷこーん(プロフ) - 子猫丸さん» そうです!! (2017年7月15日 22時) (レス) id: f1fc94d5f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽっぷこーん | 作成日時：2017年4月23日 16時
