瞳の奥に映るもの【シリウス･ブラック】 (ページ37)

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ジェームズ達にここを教えたことを言えば怒るだろうな

でも……それでも構わない

今この瞬間を俺だけが見ていて、俺だけが知ってる

堪らない優越感だ

・

『最初は難しいかもしれないけど、シリウスならきっとすぐに弾けるようになるよ』

シ｢俺は弾かなくていい｣

『え、絶対弾けたら絵になるのに』

あからさまにｼｭﾝとする姿に可愛いと声に出そうになる

シ｢俺はお前が弾いてるのを見てるだけで十分だ｣

『そう？』

・

それから何時間ボルベールの奏でる音を聞いていただろうか

いつの間には日は沈み始めていて部屋一体がオレンジ色に染まる

ボルベールは弾くのに夢中になっていて時間なんて忘れてるようだ

ピアノに預けていた体を起こし、そっとボルベールの方を振り向く

シ｢ｯ｣

その姿に一瞬息が止まったかのように体が動かなくなる

ちょうど窓の光を浴びているボルベールはいつもの幼く可愛らしい姿と異なっていた

背筋は伸ばされ、軽やかに動く指先

鍵盤を鳴らす度に揺れるシルバーブルーの髪の毛

何よりも瞼を閉じて少しだけ口角が上がり楽しそうに弾く彼女の姿は

シ｢綺麗……｣

『？、あぁ夕日？本当に綺麗ね！もう夕方になってたなんて全然気づかなかったわ』

シリウスの声に反応して演奏は中断される

それと同時に自分の声が漏れていた事に気づいた

シ｢いや、俺が言ったのは、…あ～夕日も綺麗だけど｣

『？夕日の事じゃないの？』

陽の光に反射して煌めくサファイアの瞳に見つめられまた蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる

シ｢な、なんでもない！｣

ﾊﾞｯと効果音がつきそうな勢いで目を逸らし赤くなっているであろう顔をボルベールから背ける

『そう？……そろそろ談話室に戻ろっか。リリー達が心配しちゃう』

シ｢…そうだな｣

・

秘密の部屋から出て談話室までの道のりを2人で歩く

先程の光景が頭から離れなくてボルベールを直視出来ない

『ねぇシリウス』

シ｢ん？｣

少し前を歩いていたボルベールが振り向きニコッと笑う

『また2人(・・)で、行きましょうね！』

シ｢ｯｯ……ぉぅ｣

かすれた声が出てしまったがボルベールは気にすることなくまた前を向いて歩き出す

シ｢ﾊｧ～｣

ピアノを弾いている時とのギャップに思わず溜息が零れた

シ｢綺麗なのは───｣((ﾎﾞｿｯ