非 日 常 的 日 常 7

▽ ページ48

隆二 side

「風呂と便所と飯当番はローテーションな！…便所掃除、今日誰だっけ…」

ブツブツ呟きながら、家を案内する男の後ろを無言で歩いていると、男がくるりと俺を向いた。

「…お前さー！うんとかすんとか言ってくんね？俺一人で喋ってるみたいじゃん？」

おれ、直人！苗字は片岡な！

と言って、俺に笑顔を向ける男を無表情で見つめる。

「なんかお前、臣に似てんね」

そんな俺に、後ろ髪を掻きながら苦笑し、再び廊下を歩く男。

「そういや臣じゃん…便所と風呂掃除…あいつ大広間からすぐ出てったと思ったら…サボり散らしてやがるな…あ、臣もお前とタメぐらいだからさ、話しかけてみれば？返事返ってくんの10回中1回くらいだけどな！」

『…』

「…最近の若いやつってなんでこう反応鈍いかねぇ…クールが流行ってんのか？ここが便所ー、うぉい登坂！ちゃんと掃除してんのかー！？」

よく喋る男が木の扉を開けると、大きな脱衣場でしゃがんで携帯を弄りながら煙草を吸っていた男が顔を上げた

「お前なー！誰が煙草吸えって言ったんだよ！掃除をしろ掃除を！まだこの辺埃溜まってんぞ！洗面所もビシャビシャじゃねぇかこら！」

ガミガミ怒鳴る男の後ろで、脱衣場にしゃがむ男から目を離せなかった。

少し切れ長の瞳と目が合うと、男は薄く目を細めた。

「まさか便所掃除まだとか言わねぇよな！？風呂掃除に1時間もかけてるとか言わねぇよな！？」

無言で視線を交わらせる俺達に、憤っていた男が、静かになる。

「…何見つめあってんのお前ら…え、何、知り合い？」

「全然」

吐き捨てるように呟いて、立ち上がり、煙草を流し台に捨てると、バケツを手にする男

「あぁそう…こいつ、今市ね、お前も話聞いてたから分かるっしょ？今日から住むから。…で、こいつ、登坂。目みて話しかけてもスルーかましてくるクソガキね、こいつに色々聞くといいよ、20回中1回しか答えてくんねぇと思うけど。」

『…』

「…」

「お前らさ…もう少し和やかにできねぇの…あ、登坂ついでに今市に掃除手伝って貰えよ、お前1人じゃ日暮れるわ」

俺と男を交互に見ながら紹介する男に言葉を返さず黙っていると、空気で男が項垂れるのが分かった。

「無視は良くねぇと思う…俺…」

憔悴仕切った顔でよろしくな…と呟いて頑張った、俺、頑張ったとブツブツ言いながら、フェードアウトしていく男をスルーして、バケツを手にした男を見つめる。

懐かしいと思いたくないくらい見覚えのある顔が俺を見つめていた。

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