星を塗り潰せばいい ページ36
『中…入りな？』
そう聞くと俯いたまま静かに首を振る優
芽。
『ここじゃなんだし…外、行く？』
小さく頷いた優芽を見て、大広間の方へ顔を向ける。
『おじさーん、ちょっと外出てくる！』
大広間へ向かって叫ぶと、そのままサンダルを掃き、玄関をあける。
『ここの坂もっと登っていくとね、公園があるの。ブランコとすべり台とベンチぐらいしかないんだけど、街の夜景が凄い綺麗なんだよ』
空車のランプをつけたタクシーが私達を追い越す。
優芽は無言で俯いたまま坂を登り続けた。
『見て！綺麗でしょ！』
人気のない小さな公園に入り、街の夜景を見渡せる位置へ手招きすると、優芽はゆっくりと足を進めた。
「ほんとだ、」
柵の前の木のベンチに腰を下ろし、ぼんやりと夜景を見下ろす優芽。
『…優芽、何かあったの…？』
私の言葉に、優芽は静かに俯く。
「雅人と、…別れてきた。」
秋の生ぬるい夜風が綺麗に染められた優芽の髪を揺らす。
「今日、雅人に会いに行ったの。仕事休みだし、いるかなと思って。家に行ってもいないから、駅の前ブラブラしてたら、パチンコ店から出てきた。」
『…』
「仕事、1ヶ月も前に辞めたんだって。車ぶつけたのも嘘。パチンコで負けて、お金に困って、それで。…私、全然、知らなかった。」
自嘲気味に笑う優芽に、言葉を失う。
『なんで仕事…』
「同期がね、昇進したんだって。」
『…』
「使えない奴を昇進させるような会社はクズだ、もっと俺の力を買ってくれるところじゃないと意味が無い、俺の実力が発揮できるのはあの会社じゃない…だって。…馬鹿みたい。」
『…』
「俺は会社のために尽くして、貢献したのに、なんで昇進するのはゴミ同期なんだって、会社としておかしいってヘラヘラ笑って言うの。…あんなに傲慢で幼稚な人だなんて思わなかった。……私が気付こうとしなかっただけかな。」
『優芽、』
「“次の会社は決まってるの？”って聞いたら、なんて言ったと思う？…俺の実力を買ってくれる会社はなかなか見つからないって。笑っちゃった。」
『…』
「別れるって言ったらさ、なんで？って。借りたお金なんて新しい会社の給料ですぐ返すよ、なんなら倍にして返そうか？って…もう、無理だと思って、別れてきた。泣かれたけど、…別れて来たよ。」
『っ、』
「ほんと、馬鹿だよね、私。あんな人とずっと付き合ってたなんて。」
そう言って笑って、ぼんやりと夜景を見る優芽の瞳は、ゆらゆらと揺れていた。
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happytaimama(プロフ) - 今晩は。こちらの作品何度も読み返して読ませてもらっています。続きを読みたいので、パスワードを教えていただけますか？宜しくお願いします。 (2月16日 18時) (
レス) id: 4f1df4c5a4 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 感動しました。 (2020年12月16日 14時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - もう更新はないのでしょうか……？ (2019年1月25日 23時) (レス) id: 5703e26db8 (このIDを非表示/違反報告)
м i i(プロフ) - 続き楽しみにしています！！ (2018年12月28日 1時) (レス) id: 223aa4411e (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 待ってますすすすby mj (2018年12月24日 18時) (レス) id: 866e6acc2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：jiu.
| 作成日時：2017年11月22日 11時
