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真実はいつも ページ18

おじさんの部屋の前で立ち尽くす。

心臓が飛び出そうなくらい脈を打っていた。

『お、じさん…入るよ』

出した声は、僅かに裏返った。

「おう」

部屋の中から聞こえた声に、震える手で襖を開ける。

おじさんは、漆塗りの座卓の前で難しそうな本を広げていた。

「おかえり、」

『…ただいま』

蚊の泣くような声で答えた私に、軽く微笑んだ。

『…ちゃんと、…話したくて…』

そう言った私におじさんが静かに机に本を置いた。

おじさんに促され、横に腰を下ろす。

『…質問してもいい?』

「いいよ」

『…正直に、答えてくれる?』

「あぁ、」

深い色を宿した瞳に見つめられ、胸が震えた。

『どうして、私におじいちゃんのこと、教えてくれなかったの?』

「…」

私の質問に、静かに視線を落としたおじさんが小さく息を吐いた。

「…重昭さんに、言われたからだ。」

『え、』

「Aには自分の存在を告げるなと、そう言われた。」

『おじいちゃん、が?』

予想外の答えに動揺した。

『どうして…』

「…重昭さんは受刑者だった」

『…』

「身内に犯罪者がいる家族が自分の家の近くにいたら…近所の目や世間は優しくない。必ずどこかで家族が傷付く羽目になる。それをずっと懸念していた。」

『…どうして捕まったの?』

「悪いことをしたからだ」

『…どんな悪いこと?…だって、こんなに長い間、入ってるなんて…』

「……」

30年以上経ってもまだ出所の見込みがないなんて、どんな罪を犯したの?

『…何人、人を殺したの?』

おじさんが机の上の煙草に手を伸ばした。

「…それは、わからない」

銜えた煙草に火をつけ、白い煙を吐き出しながらおじさんが呟いた。

「重昭さんは、一度も家族に手紙を出さなかった。」

『…』

「自分のことは忘れて、自分とは関係の無い人間として生きてほしい。そう言ってた。」

「その思いを拒んだのは、梢江さんだった。」

『おばあ、ちゃん?』

「重昭さんは梢江さんが再婚することを望んでいた。こんな碌でもない旦那のことなんてさっさと捨てて、しっかりした人と幸せになってほしい、そう思い続けて手紙も出さず、面会も断り続けた重昭さんに、梢江さんは定期的に手紙を送り続けた。」

『…』

「送られた手紙には必ず写真がつけられていたそうだ。」

アルバムに納められていた写真は…おばぁちゃんが送ってた?

学生時代のお母さんの写真を全部?

カチリと頭の中でパズルのピースがハマった気がした。

▽→←出身はフランスらしい



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happytaimama(プロフ) - 今晩は。こちらの作品何度も読み返して読ませてもらっています。続きを読みたいので、パスワードを教えていただけますか?宜しくお願いします。 (2月16日 18時) (レス) id: 4f1df4c5a4 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 感動しました。 (2020年12月16日 14時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - もう更新はないのでしょうか……? (2019年1月25日 23時) (レス) id: 5703e26db8 (このIDを非表示/違反報告)
м i i(プロフ) - 続き楽しみにしています!! (2018年12月28日 1時) (レス) id: 223aa4411e (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 待ってますすすすby mj (2018年12月24日 18時) (レス) id: 866e6acc2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:jiu. | 作成日時:2017年11月22日 11時

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