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気づけば家に帰っていた。頭に靄がかかったように不明瞭でAはいつからこうして壁にもたれていたかも分からない。夜は更けて物音1つない。少し欠けた月の光がレースカーテンを通して横顔を照らしていた。
Aにとって仲間を探すという事は支えでありヒーローになることが目標である。そして自分を閉じ込めていた組織や国際社会へのフラストレーションを糧にしていた。そんな大きな感情の柱の1つが突然ごっそりと抜け落ちたのである。
普通の学生ならば気にすることもないだろう。が、無垢なまま何も与えられることはなく歳だけを重ねてきたAにはこの気持ちの納めどころがわからなかった。
そして不安が1つ。あれだけ執着してきたAをなぜ今解放したのかと、それだけがAの胸をざわつかせていた。
雄英入学が認められてからあまりにも早い所属移行の決定である。普通なら1年は現状を見極めるものだろうと予測はしていた。何か嫌な予感が胸のあたりに渦巻いているのだ。
ドアの方を見やる。研究所で帰りに餞別として渡されたのは白木拵の模造刀だった。
ピンクや白、黒に紫。仲間たちが携えていたそれに限りなく近い刀。徒手空拳にはかなり慣れてきたがきっと刀を握っていた時間の方が長かったのだろう。その心地よい重さには素直に心が踊った。
｢白粉とらなきゃ…｣
ゆっくりと立ち上がる。
仲間を探す。結局はそれでいいのだと第六感から目を背けた。
2週間はあっという間に過ぎ雄英体育祭本番当日。
開会式には出られると許可が降りたためクラスの皆と共に控え室で時間を待つ。
競技中はヒーロー科の席に1人でいるより経営科の人達に混ぜて貰おうと考えた。毎年個人でジュースなどを一般観客に販売するらしいが最悪売り子として手伝いすれば目立ってカメラに映ることはないだろう。
売り子なんて初めてだなぁ…と内心ドキドキしていると控え室は静まっていた。
｢僕も本気で獲りにいく！｣
そんな緑谷の声に皆の士気が上がるのがわかった。
(いややっぱり出たかったよ)
渋い顔で緑谷を見つめると挙動不審に会釈をされた。さっきまでの威勢はどこに行ったのか。
｢1年ステージ 生徒の入場だ！！｣
血湧き肉躍る体育祭が今始まる。
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あかや - とても面白かったです！更新待ってます〜！ (2020年12月15日 13時) (
レス) id: 51d8bbe764 (このIDを非表示/違反報告)
ぱすてる - とてもよかったです(´；ω；｀) (2020年4月19日 18時) (レス) id: d34f4e9add (このIDを非表示/違反報告)
八百(プロフ) - みんなが名前を呼んでるとこでちょっと涙出ちゃいました…更新待ってます！ (2019年3月29日 21時) (レス) id: db047f61b6 (このIDを非表示/違反報告)
音春(プロフ) - 更新頑張ってください！(受験勉強も) (2018年12月1日 17時) (レス) id: f210cca1fd (このIDを非表示/違反報告)
星を見守る砂岩(プロフ) - すごく面白いです！更新頑張ってください！ (2018年11月16日 21時) (レス) id: 5a8ebe94bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さも | 作成日時：2018年2月9日 2時
