イエローリップ・ストーリー【S.S】３’ (ページ5)

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＃７５ページ5

こんなにも優しそうな表情のお母さんだって何を言うかわからない。

何度も思うが俺はAにとっては加害者。

お母さんお父さんは娘を傷つけられた人である。

「そう緊張なさらずにどうぞこちらに座って？」
「あ、はい、失礼します。」

お母さんはやっぱり笑顔を絶やさずに俺を見てさらににこりと笑った。

「Aね、最近…ううん、事故に遭ってからかな。生き生きしてるの。」
「はい、」
「きっとあなたのおかげなんだと思うわ。」
「え…？」

呆然とする俺を見てお母さんは笑い、話をつづけた。

「あの子、友達は少なくていいとか言って案外一人でいることが多かったの。だからこうやって他人の話をするAが珍しくてね。」
「あの、その他人というのは…」
「もちろん、櫻井さんよ。」

Aは俺のことをお母さんやお父さんに話しているということなのか…？

「Aさんはどんな話を…？」
「今日は櫻井さんからこんな花を貰った、今日は櫻井さんとこんな話をしたって。毎日楽しそうで仕方がないのよ。」

俺とのありふれた時間をAはお母さんたちに毎日楽しそうに話をしているなんて。

そんなの嬉しくて仕方がなかった。

Aは幸せなんだと、心から実感できた。