イエローリップ・ストーリー【S.S】３’ (ページ3)

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＃７３ページ3

「あったかいなぁ…。」

そうやって普段俺らが当たり前のように浴びている陽の光を体全身で受け止めている。

しみじみと出た言葉は心の底から、というものを深く感じる。

毎日毎日照り付ける太陽が大嫌いだった。

でも冬になれば太陽が恋しくなった。

ずっとずっと、そう思って生きてきた。

やはり、Aといると当たり前がいかに大事かよく教えてくれる。

この照り付ける太陽の光を浴びることのできない人がいる。

そう思うともう少し毎日を大事にしないとなと思うのだ。

「やっぱり、外の空気はいいなぁ…」
「Aがさ、歩けるようになって体力も戻って退院したらたくさん出かけような。」
「うれしい！楽しみが増えた！」

そうやって笑みをよく零すのだ。

どうしてそんなにも笑顔になれるのか。

本当に彼女はよく笑う。

だから俺もうれしい。

「Aが行きたいところ、全部行こうな。」
「海外でも行きますか？」
「もちろん、どこへでもお供しますよ？」
「ふふっ、嬉しい。」

俺を見上げ微笑んだと思えば彼女は俺の手を握った。

華奢だけど、温かくて優しい手だった。

俺はその手を握り返した。