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蒼井Aside
『な、なんで…!』
「な、棗…!」
水玉の背後には、今まで見た事無いくらいに怒っている棗がいた。難しい言葉を使うなら、鬼の形相ってやつ。
そして棗は、ゆっくりと口を開いた。
「A、流架。帰るぞ。ゲームは終わりだ。この女は失格だ。…とっとと此処から出て行け!!」
『ま、待って棗!まだ決めるのは早いと思う!』
私の言葉も無視して、棗は水玉を木に押さえつけた。痛そうに小さく呻き声を上げた水玉を見て、チクリと胸が痛んだ気がする。
「Aの優しさに漬け込んで、汚い手で流架を利用して…」
「あっ、あ…」
「舐めた真似してんじゃねえぞ…!!」
棗のあまりの恐ろしさに、水玉は怯えてしまっている。こうなった棗にはきっと、私の声も流架の声も届かない。それでも。
「棗、やめて!Aも俺も何ともないから!」
『そうだよ!それに、実力とかアリスとか色々試すだけって、私言ったじゃん!』
諦めない限り、きっとこの声は届く筈だ。ねえ…そうだよね、棗。私たちが初めて出逢ったあの日の様に。
「俺は元々反対だった。だからもう、コイツの正体暴くのに、一々手段選んでやるつもりはねえよ。」
その言葉を聞いた今井が、このままじゃマズいと思ったのか、私に目配せをした。い、嫌だよ!私、棗に何かして嫌われたら立ち直れないもん!そういう意味も込めてブンブンと拒否する様に頭を振れば、今井はポケットからコッソリと写真をちらつかせた。
…ああ、もう!仕方ないなあ!見逃してやるよバーカ!!
───────ボンッ
その瞬間、辺り一面に煙が広がった。
「ゴホッ…!」
咳をする棗を見て、もの凄く良心が痛んだ。ごめん…ごめん、棗。お願いだから、嫌いにはならないで。後でたっぷりお説教なら聞くから!
心の中で棗に謝りながら、私は水玉の背中を押した。
『あっち!』
小声でそう指示すれば、水玉は頷いて走って行った。だけど。
「委員長…!」
棗の炎に囲まれた委員長を見て、逃げる足が止まった。
「手段は選ばないと言った筈だ。とっとと吐けよ、お前のアリス。」
勢いを増す炎を見て、水玉が今井に向かって叫ぶ様に言った。
「火を止めて…!蛍、消化器か何か!」
「ソイツの炎はそんなんじゃ消えないわ。…Aのアリスなら対抗出来る筈だけど…」
そう言って視線を向けられた私の名前を、呼んだ。
「A。」
聞き慣れた、その声が。
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名無し67465号(プロフ) - とっても面白いです!!3人の関係とか…ナルの今後とかほんとに楽しみです!更新待ってます! (6月10日 1時) (レス) @page40 id: 4d7900bf24 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - 初コメ失礼します!私、愛され&逆ハー大好物なので嬉しいです!学園アリスのキャラ全員推しなので嬉しいです!更新頑張ってください! (2023年4月27日 6時) (レス) id: 3b02df20c8 (このIDを非表示/違反報告)
MIMI(プロフ) - とっても面白かったです!忙しいと思いますが、続き読むの楽しみにしてます!! (2020年6月25日 6時) (レス) id: f110a4bf7d (このIDを非表示/違反報告)
椿 - 学園アリス、初めて読んだけどとても面白かったです。お忙しいとは思いますが、無理をせずに更新頑張ってください!応援してます!! (2020年4月18日 22時) (レス) id: 314144f7d7 (このIDを非表示/違反報告)
Σ(・д・) - とっても面白いです!続き頑張って下さい! (2018年2月26日 22時) (レス) id: b4b3e9b57b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マダム・リリー x他1人 | 作成日時:2017年1月21日 6時