恋心は偽らない【黒羽快斗】

６話 ページ40

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職員室で用事を済ませ、さっさと帰ろうとしていたら、青子に名前を呼ばれた。

何なんだと思ったが、「Aちゃん来てるよ」の一言で俺は思考が停止した。

え、いや、なんで学校までわざわざ。
昨日のことがあるから、恥ずかしさで少し焦る。

青子がまたニヤニヤするから、また言い合いになった。
しかしAの姿が見えて、心臓がうるさくなる。

Aと少し話して、青子はさっさと帰ってしまった。
何も言わないのも変だよな、と思って学校まで来た理由を聞いてみたら、なんか適当にはぐらかされて、帰りながら話すよって言われた。
俺は不思議に思いつつ、おとなしく従った。

公園の方に向かってるあいだ、俺は上手く話せていただろうか。いっぱいいっぱいで、あんまり記憶がない。

公園について、もう一度理由を尋ねた。するとAはぽつりぽつりと話してくれた。

何かと思えば、嘘ついたから本当のこと言いに来た、とのこと。
拍子抜けして、間抜けな声を出した。

どうやら、買い物に来てた、と言ったのは嘘で、本当は母親のお見舞いに行っていたそうだ。

なんだそんなこと、と思ったけれど、Aの顔は晴れないままだったから、押し黙った。


「…わたしのお母さん、ずっと入院してるの
９年間、お父さんが亡くなった日から」

ぐっと、顔がこわばった、気がする。
９年前、というと俺がAに初めて会った、それくらいの頃だ。

「快斗くんと初めてあったとき、もう既にこの状態だった

…だから快斗くんのマジックに、すごく救われた」


そう言って、石を出してくれた。
うまく言葉が出てこなくて、そっか、とつぶやいた。


俺のマジックで笑顔になった、というAの言葉は、俺を喜ばせるのには十分すぎた。

こいつのこと好きになって、よかったなと思った。

このさい聞いておこうと思って、入院している理由を聞いてみた。

理由は思った以上に壮絶で、気の利いた言葉が言えない自分に腹が立った。

ただ、ため息をつくAを、笑顔にしたい。そう思った。

そう思ったから、昔見せた花を出すマジックを披露してやった。

Aはびっくりして、どうしたんだと尋ねてきた。
俺はにっと笑ってやった。


「おめーが暗い顔してたからな

俺といるときはそんな顔するヒマねーくらい、楽しませてやるよ」


こんな恥ずかしい言葉、快斗で言うとは思ってなかった。

けど伝えてしまうくらい、そう思わせてくれるAはすごいな、って思った。






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