1話 ページ35
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あれは、一目惚れだったのだろうか。
もう9年も前の話、記憶だって曖昧だ。実は夢なんじゃないかと、何度も思った。
けれど、あのときの笑顔を、いつまで経っても忘れられないでいるこれは確かに現実なのだ。
だから、帰り道にたまたまぶつかった彼女が笑ったとき、あのときの記憶と重なったから。
声をかけたのだろうか。
「ありがとうございます!これ、すごく大事な宝物なんです」
必死だったから、あっ!!、と大きな声を出した。
彼女はびっくりして目をぱちくりさせて、悪いことしたなと思う。
「な、なあ!俺のこと、覚えてねえか!?」
「へっ?」
落とした
彼女は少しうーんと考えたあと、俺の顔をじっと見つめた。
少しして、はっとしたように目を見開く。
「…あっ!!」
彼女も俺を、思い出してくれたようだ。
この時点で俺は、名前も思い出せない彼女に思いを寄せていたのかもしれない。
「これ、この宝石くれた男の子!」
「そう!もうすっかり忘れてたけど、今思いだしたぜ!」
そのときの彼女の笑顔に照れてしまって、バレないよう手の中の宝石に目線を移す。
今思い出した、という嘘とともに。
こんなおもちゃなのに、今も大切に持ってくれてるんだなー、とつぶやく。これは本心。
まさか9年間も大事にしてもらえているとは思わなかった。
しかし、いつまでも照れていてはここで別れておしまいだ。
気になって仕方がない彼女にまた会うため、俺は急いで自己紹介をした。
「あ、そうだ!
俺は黒羽快斗、これも何かの縁だ、よろしくな!」
ポーカーフェイスを保って、照れているのを悟られないようあくまで自然に手を差し出す。
「わたしはAA!
こちらこそよろしくね、黒羽くん」
黒羽くん、と呼ばれて何故か不満に思ってしまった。
呼び方ひとつで女々しいかな、と思いつつ言葉を並べる。
「クロバくんなんてよそよそしいなー、快斗でいーよ、俺もAって呼ぶし」
「へっ!?う、うん、快斗…くん」
あんまりぐいぐい距離を詰めてチャラい男だと思われたくなかったから、自分も名前で呼ぶ、と付け足して。
内心ドキドキだったけど、ポーカーフェイスで包み隠した。
よくできました、なんて小っ恥ずかしいセリフを言って宝石を渡した。
どうやら自分は、好きな子の前でカッコつけたくなるタイプらしい。
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みすと(プロフ) - わあああ返事遅くなってすみません(;; ) わたしも見ました、何回みても最高ですよね… こちこそ読んでくださってありがとうございます! (2020年4月24日 13時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
なな@鬼滅あんスタ(プロフ) - 昨日のロードショー見て来たのはうちだけじゃないハズ((((作者さんありがとうございます... (2020年4月18日 9時) (レス) id: 967fb8e362 (このIDを非表示/違反報告)
みすと(プロフ) - 加々知 零さん» 黒羽快斗くん夢、書くのとても楽しかったです(つω`*)小説読んでくださりありがとうございます! (2019年7月2日 22時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
加々知 零 - 。゚(゚´ω`゚)゚。快斗×夢主がヤバイよぉぉお!! (2019年7月2日 21時) (レス) id: b33ef74fc2 (このIDを非表示/違反報告)
みすと(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» 最後のセリフは絶対これで終わろう!って考えていたのでそう言っていただけて嬉しいです!本当に読んでくださり感想までお聞かせくださり、ありがとうございます!また何か書き始めたら覗いてってください(^^) (2019年5月31日 19時) (レス) id: 2f6679e490 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みすと | 作成日時:2019年5月8日 21時